終わりなき道  (2016/10/2)

文字数 733文字

2016年8月15日 第1刷
著者: ジョン・ハート  訳: 東野さやか
早川書房



ジョン・ハート四年ぶりの待望の新作を一気に拝読した。
「終わりなき道」は第五作,
「キングの死」、「川は静かに流れて」、「ラストチャイルド」、そして「アイアン・ハウス」の過去四作はすべて今まで経験したことの無い 重厚な哀しみに満ちた、それでいて壮大なアクションサーガだった。
そう、彼の作品は重・長・壮・愉なのだ。
本作もポケットミステリーブック体裁で600ページ弱の大作になっているが、物語はわずか数日間のノースカロライナ田舎町の悲劇を深淵まで抉り取っている。
小説のカテゴリーとしてはポリスストーリー、
主人公は容赦なき一匹狼女刑事、
彼女に密に共演するのは、18歳の少女と14歳の少年、
周りを固めるのは刑務所を出所したばかりの元敏腕刑事(女刑事の憧れのヒーロー)と心優しきき現在のパートナー刑事、刑務所を私物化し無法な管理を行っている所長グループ。
三つの事件が同時発生していく:
⚫️内部監査される主人公の犯人射殺の正当性
⚫️刑務所長による謎の恐喝、暴力
⚫️そして、シリアルキラー事件浮上とあらたな犠牲者

そのベースにあるのは、登場人物すべての心の暗黒部分だった。
生きる者すべてが背負う罪を贖うための悲しくて壮絶な物語だった。
今作でも ジョン・ハートでしか描ききれない因業に立ち向かう人たちの美しさが大きな救いとなった。
エピローグは、煉獄の苦しみを乗り越えて天国に憩う主人公の姿だった。
いつものような饒舌な人物描写から主人公のそれをひとつだけ紹介する:
《 これほどまでにもろいものも、毅然としたものも、あるいはこの世のものとは思えないほど美しいもの・・・》
ジョン・ハート作品は僕を圧倒する、今回も。
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