22世紀の民主主義 (2023/4/24)

文字数 848文字

2022年7月15日 初版第1刷発行 2023年2月13日 初版第8刷発行
著者:成田悠輔
SB新書



直近の国政補選、地方選挙に接し、もはや何も感慨を持てないほどのシステム劣化を感じている。
地方選挙では複数立候補者がいないための無選挙がかなり多いこと、そもそも選挙に行かない有権者という人間が多いこと、そして最悪なのが選挙結果をもって「民意が反映された」と結論づける政党、メディアの胡散臭さに、何度も経験した無力感に吐き気さえ覚える。
民主主義の根幹であると称される「選挙」、そこで何が審判されるのかも不明のままに候補者名を記入して義務を果たしたとする民主主義がもはや名前だけのものであり、機能していないこは今更ながらであるが、本書はそんな悩める良識人の鬱積に微かな希望の灯を点してくれる。

サブタイトル 《 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる 》 の意味が最後まで読むと判る仕掛けになっている。
そこに至る過程で、現行民主主義に関する「故障」、「闘争」、「逃走」を考察し「構想」に辿り着くスタイルになっているが、著者が最初から言い訳しているように、本作での主張は何も目新しものではなく、著者自身も政治学の専門家ではないことから、ある種の預言として受け取っておくことが肝要だろう。

ポイントは人工頭脳による膨大なデータ収集と解析からなるという、「無意識民主主義」構想に尽きる。直接は見えない民意をさまざまなセンサーから読み取ってその平均やアンサンブルを取るという前提の今話題のAI仕様である。

ここでタイトルになっている【22世紀】の重さに気づく。
これは何世代かを経て実現する可能性のある理想の政治形態としての「無意識民主主義」を論じていることに気づく。
100年後のことはわからない、鎌倉時代の侍たちが現在の民主主義を想像できなかったと同じように、僕にもアルゴリズムによる民主主義を想像することが難しい。
それでも、こんな政治形態がくることに望みをつなぎたいという思いは強い、今の民主主義の無能を思えば。
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