パチンコ  (2021/2/10)

文字数 771文字

2020年7年30日 第1刷 12月25日 第4刷
著者 ミン・ジン・リー Min Jin Lee  訳 池田真紀子
文藝春秋



在日コリアンの苦難のサーガ、五世代にわたる家族の切ない物語だった。
・・・という簡潔なまとめだと誰も本書を手にしないだろうと危惧する、僕の場合は毎日新聞の「2020年年間推薦書籍」に複数挙げれれていたことから最近手にした次第だった、識者の選択眼に狂いはなかった。

上下巻のボリュームではあるが物語の展開の引きこまれる魅力は近年記憶にないくらい、登場人物にこれほど感情移入できることも久しぶりだった。
本書は1910年(韓国併合)から始まり1989年のバブル真っ盛りまでの大きな時代の流れを在日コリアンの視点で描くが、その舞台は主人公ソンジャが日本に渡るまでの釜山、影島での生活以外は、すべて日本。
戦前、戦中、戦後、高度成長期、そして前述したバブル経済下の日本が舞台であり、この79年間の物語の39年を僕も同じ空気を吸っていたことにちょっと感動する。
著者の綿密な取材の結果、この79年、少なくとも39年は見事に再現されている。
在日コリアンの苦しみを傍らからとはいえうすうす感じ取っていた僕の青春時代が蘇ってなにやら懐かしさまで感じた。

物語りの概略をここに述べることは無思慮であると同時に、この大河物語を一言で括ることはできない。
在日コリアンの代名詞として掲げられたタイトル「パチンコ」を中心に多様なエピソードが五世代にわたって展開する。小説としての面白さと日本社会の歪みが苦甘の誘惑で次の頁へと読み進ませる。多くの日本に住む人々に読んでもらいたいと切に思った。

巻末の解説に【まるで「おしん」のような話】とあったが、僕には「風と共に去りぬ」のときのような楽しい読書経験になった、
ちなみに「風と共に去りぬ」は16歳の時の衝撃だった。
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