悲しみのイレーヌ (2015/10/18)

文字数 826文字

2015年10月10日 第1刷
著者:ピエール・ルメートル
文春文庫



カミーユ・ヴェルヴェン警部シリーズの第一作にして、著者ルメートルの作家デビュー作である
「悲しみのイレーヌ」がようやく発刊されました。
もっと分かりやすく言えば、本作は昨年(2014年)大変な話題になった「その女アレックス(シリーズ第三作)」のシリーズ第一作です。
「その女アレックス」が先に翻訳され人気になったので、シリーズ最初に戻っての発刊ですが、
この手の混乱はシリーズものでは珍しくありません。
それでも、「その女アレックス」に先行する事件を読みたいと心から思っていたので、これで心底満足しました。
なぜ、シリーズ第一作の「悲しみのイレーヌ」がマーケティングされなかったかという理由は読んでみて納得しました。
しかしながら、残念ですがこれをお知らせしてしまうと、本作のコンセプトを揺るがせることになるので控えさせていただきます。
間違いないのは、「あの女アレックス」で受けた衝撃以上の小説作法に驚かされるということだけです。
タイトルからも想像できますし、第三作で一部開示されているので本作のカタストロフィーもお気づきでしょうが、それをも凌駕するミステリーに出会います。
ちょっとした懸念ですが、本作には歴史的猟奇ミステリー名作が謎解きのキーになっているので、ディープなファンには心地よいかもしれませんが、そうでないとフォローするのが苦しいかもしれません。

しかし、繰り返しますが、そんなディーテイルを無視しても本作の構成が驚愕です。
やはり、特異過ぎて第一作から日本に紹介するわけにはいかなかったのでしょう。
ちなみに、前述の猟奇殺人に関連する名作5作のうち、
「ブラック・ダリア(ジェイムス・エルロイ)」、
「ロセアンナ(マイ・シューヴァル、ペール・ヴァール)」は僕も読んでいました。
マニアのコンプレックスをくすぐる所業でした。
ぜひ「その女アレックス」に陶酔した読者は本作にも挑んでいただきたいと願います。
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