あなた、そこにいてくれますか (2020/11/19)

文字数 921文字

2017年10月20日 初版発行
著者 ギョーム・ミュッソ GUILLAUME MUSSSO  訳 吉田恒雄
潮出版



AMAZON のよくできた作品紹介をまずご紹介する:

『忘れられない人がいる60 歳の医師エリオットはボランティア活動に行ったカンボジアで、
子どもを救ったお礼にと、不思議な老人に錠剤を渡される。飲んでみると、死んでしまったはずの恋人が生きている30年前にタイムトリップ。手に入れた薬は10 錠。1 錠につき過去に戻れるのはほんの数分だけ。限られた時間の中で、彼女を救い、失った愛を取り戻すことができるのか?
心を揺さぶる奇跡のラブストーリー。』

しかしながら、これだけでは安っぽいゴースト・ラブストーリーに思われてしまう。
ギューム作品だから最後のサプライズを期待しながらにしてもである・・・。
実は本作品、かなり本格的なパラレルワールド、それも思考面でハードな趣がある、SF少年の成れの果てとしては大いに楽しませていただいた。
パラレルワールドジャンルとタイムスリップジャンルはどう違うのか?も気にかかるところだが、所詮はベストセラー小説、あんまり肩肘張ってスペキュレイティブになることもない、何せギューム・ミュッソなのだから、彼の誘うままに物語を愉しめばいいのだ。

読みどころは、60歳と30歳の主人公が過去で出会うということ、そして恋人の死をどうやって防ぎ命を守るか‥という点に尽きる。
そのために支払う二人(一人?)の犠牲の大きさも物語の哀しみのエッセンスになる。
そう、いきなり同一人物が出会って話をする、接触する、ミッションを達成する・・・これは当然ながらSFの発想にはない。かなり濃いめのラブ・ファンタジーである。
パラレルワールドに拘っていると、この愛の世界は見えてこない。

いつもの様に、主人公には個性的な相方がついているが、本作での狂言回し役は60歳と30歳の主人公。ギュームらしい、読者サービスとして1976年と2026年の時代のギャップなどがちりばめられ、今作もあっという間の読了になる。

軽かろうが、甘かろうが、小説は面白い方がいい。
「ブルックリンの少女」、「パリのアパルトマン」と同様の爽快な読後感。もう1作試してみようかな。
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