夜の谷を行く (2017/5/26)

文字数 700文字

2017年3月30日 第1刷発行
著者:桐野夏生
文藝春秋



帯の宣伝コピーが過激だ・・・・元全共闘世代にはにはという限定付きだけど。
その帯曰く:
『 1972年連合赤軍事件、あさま山荘事件
  2011年永田洋子の死、東日本大震災
  そして― 忘れたい過去が追いかけてくる
  革命を夢見ていた女たちのもうひとつの真実 』

もっともこのコピーはサスペンスドラマのサブタイトルとしてもピッタリおさまりがよさそうである、どうやら本作は煽情的だな・・・と云う予断があった。
桐野さん面目躍如のヒロイン、元京浜安保共闘(連合赤軍)の女性兵士の現在を鬱鬱と書き記していく。
主人公 啓子は連合赤軍リンチ殺人事件の生き残り、刑期を終え世間から隠れるように(親類からははじき出され)ひっそりと生きている。
年金と貯金を取り崩して生きる一人暮らしの老女、そんな折に赤軍リンチ殺人事件主犯の永田洋子が死亡、俄かに過去が騒がしくなってくる。
40年ぶりに政治結婚の相手と再会してみたり、生き残りの女性兵士と語り合う主人公の中に芽生える表現できない焦燥の芽。
この辺りの展開は、いつもの桐野ヒロイン像から少し離れているようで、本作のテーマが揺らいでくる印象が強まる。
東日本震災はある時代の終焉のきっかけとして語られるだけで本作のメインストリームには関係がない。
僕は途中から気づく・・・これは主人公の心のなかのサスペンスを読み取り愉しむものではないかと?

唯一の交流のあった妹との決別から主人公が隠そうとしていた秘密がこぼれ出そうになる。
最後の2ページのカタルシスは近来ない衝撃だった、ただし それまでの展開があまりにも平坦すぎたことの反作用だった。
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