強襲 所轄魂 (2015/10/11)

文字数 794文字

2015年7月31日初版
著者:笹本稜平
徳間書店



父が警視庁城東署、いわゆる所轄の刑事で、その息子はキャリア警察官、
本 第3作では警察庁に勤めています。
このシリーズのコンセプトは、警察権力のありかたを現場警官と上層部との関係の中で告発していくことにあります。
これまでの2作では殺人事件捜査本部内に蠢く警視庁のエリート意識と所轄署の心意気が描かれてきました。
その流れとして、警察組織内の権力闘争と腐敗、汚職も告発しています。
小説の形をとっているとはいえ、かなり大胆なアプローチ方法だとちょっと気にしておりました。
幾分の程度において、この所轄署 対 エリート(警視庁)の物語が重すぎるのですが、
警察小説としてのミステリーも壊されることもなかったようです。

ところが、今作においては事件が
人質を取った立て籠もり自爆装置まで準備したテロ犯罪を扱います。
その犯人は元警官(SIT,特殊交渉班)、狙いは警察という前代未聞の展開になります。
犯人が警察に謝罪させる理由はなにか?
そこには、警察官僚出身の政治家の陰が見え、警察組織内では公安部と刑事部との確執が浮かび出てきます。

しかしながら、
この警察内部の問題は、いまさらながらの陳腐すぎるものですし、政治の介入もスキャンダルとしてはあまりに一般的です。
加えて、今回の事件が立て籠もりのため、所轄署の活躍するパートが限られてしまいます。
しかしフィクションならでは、犯人が交渉人として所轄の父親を指名するという救済方法がとられます。
それでも、刑事たちの足で解決するスタイルは封殺されてしまい、アクションが手薄になってしまいました。
犯人説得とは地道で繰り返しなのでしょうが、エンターテイメントしては苦痛の原因になります。

終わってしまえば、所轄というより警察の良心が勝利するという「正義話」に落ち着くのが、どうもやり切れません。
所轄魂シリーズもこれまでなんでしょうか?
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