プロット・アゲンスト・アメリカ (2014/10/22)

文字数 675文字

2014年8月30日 第1刷発行
著者:フィリップ・ロス  訳:柴田元幸
集英社



フィリップ・ロス 最高傑作との書評の真偽を確かめるのは難しい。
ユダヤ人であることとアメリカ人であることを、私小説ダミーで追及している。
多様な人種の中でのユダヤのアイデンティティをテーマとすることは、
しかしながら、アメリカ社会では受け入れられるのだろうか?
そんなことはない、と想像する。
あくまでもフィリップ・ロスはユダヤの知性であり続け、アメリカのユダヤ社会がこれを支持しているのだという気がする。
だから、日本人にはフィリップ・ロスの「壮絶」は体感できないのだろう。

本作は、歴史小説だが、SFであれば「パラレルワールド」ジャンルになる。
第二次世界大戦直前の1940年、ルーズベルト大統領の三選を阻んで当選したのは、
単独飛行勇者のリンドバーグだった。
リンドバーグは、孤立主義を堅持し戦争に反対する一方、ナチスドイツ、日本、イタリアと同盟を結ぶ。
そして・・・ユダヤ人ホロコーストがアメリカでも実行に移されていく。
まさに、ありえなくもないプロット(筋書)である。
主人公は、7歳の少年、ユダヤ人ゲットーに住む貧しくも勤勉なユダヤ人一家の中で迫りくる恐怖に本能的に怯える。
父、母、兄、叔母、従兄たちのそれぞれの反ユダヤ潮流への対応が細かく描かれる。
アメリカの良心は?、独立宣言の意義は?と問いかける中、大きな流れの中で抵抗をあきらめ、抜け殻になっていく家族。
ユダヤ人の生き方を、アメリカの存在価値を問いかける形で描き続けるフィリップロス。
アメリカ文学の珠玉、ノーベル賞に近い作者だろう。
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