震える牛 (2017/6/19)

文字数 741文字

2013年5月13日 初版第1刷発行 7月2日第4刷発行
著者:相場英雄
小学館文庫



「ガラパゴス (2016年)」で相場さんお得意の経済ミステリーというジャンルを知ることになった。
その折に2013年のベストセラーである本書「震える牛」の存在を知っていたが、ようやく手にすることができた。この2作は《 警視庁1課継続捜査班 田川信一 シリーズ》 …2作でシリーズはないか?

ポリスストーリーとして一応捜査する警官が語り部として物語は進むのだが、この主人公は聞き込みが得意な今は窓際捜査官という設定だ。未解決事件部門で、一人コツコツと古い事件を掘り返していくのだが、その裏に隠されている日本経済を揺るがすようなスキャンダルが、飛び出してくるというお決まりになっている・・・まだ2作だけではあるが。

本作は、タイトルから簡単に想像できるように、牛のBSE問題に絡んだ殺人事件、日本大手スーパー幹部たちを相手に孤軍奮闘する主人公と、流通業界独自の問題点を追及している。
「ガラパゴス」での日本自動車産業の課題をさらけ出したと同様に、大手流通業が招いた過当低価格狂騒、小規模商店の荒廃、
そして食の安全がテーマとして扱われている。

今作でも、イオングループをモデルにしたような大手スーパーが登場する、あまりの厳しい展開に名誉棄損にならないものかと余計な心配をしてしまった。
もっとも、この辺りの毒の盛り加減が相場さんの経済ミステリーを成り立たせているのではあろうが・・・。

そして、2作に共通している警察高級官僚と業界の癒着構造。
フィクションだと思えない説得力があるのは、直近で政治家が警察権力を利用して
メディアを脅したりするような時代になったからかもしれない。
その意味では、本小説は2017年を予見していた。
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