土の中の子供 (2015/7/28)

文字数 684文字

平成20年1月1日 発行、 平成27年3月25日 五刷
著者: 中村文則
新潮文庫



昨日読んだ又吉直樹さんの芥川受賞作繋がりで、2005年上半期の受賞作「土の中の子供」を読んでみる。
中村文則さんは日本人作家としては海外での評価の高い作家だが、
僕はまだ2作しか読んでいない、
受賞作イコールベスト作品というわけではないが、ちょうど良い機会なので手にしてみた。

中村作品の特徴(子供時代に異様な環境を強要された、現在20~30代青年の一人称作品)がそのまま当てはまる。
タイトルの「土の中の子供」それ自体が、すべてを物語っているが、強烈な虐待体験をからどうしても抜けきれない男と、同類の女の再生への物語だ。
しかし、そこには再生の光に到達することもなく、結局「死」が安心へいざなう心の誘惑に悩まされ続ける主人公がいた。
心の闇に身をゆだねる心地よさと、土壇場で人間の本能がそれに抗う葛藤の苦しさ。
なるほど、これこそは、「いよっ、芥川龍之介賞!」という内容だろう。

ところで、そうしてみると「火花」が異端なのは明らかだ。
しかしながら、10年間の小説不況をこのまま放置したくないのであれば、
芥川賞も自らを変革・再生することが必要だ。
菊池寛は、明治時代の大義であった欧米に追い付くため芥川賞を作ったが、
同時に自社「文芸春秋」発展に大きな貢献のあった芥川龍之介に報いた
プライヴェート(商業的)な側面もあったのだろう。

この出版不況を打開するため、アベノミクスが推奨する「経済第一主義」に適合する作品が選ばれるのはとても自然な流れだ。
今必要なのは、この芥川賞をグローバル展開することだろう。

日本文学までガラパゴス化になってはいけない。
中村文則、又吉直樹に期待するところだ。
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