炎の色 (2019/2/6)

文字数 825文字

2018年11月25日 発行
著者:ピエール・ルメトール  訳:平岡敦
ハヤカワ文庫



相変わらずピエール・ルメートルには「その女アレックス」の・・・・と云う但し書きがついて回るようだ。
なんて偉そうに言っている僕も「その女アレックス」で小説愛を鷲づかみにされて以来、邦訳作品はすべてフォローしている。
そんな邦訳作品6作目は 『世界大戦三部作』 と銘打った大河シリーズの2作目、「天国でまた会おう」の続編だ。

実はシリーズ第1作の「天国でまた会おう」はまさに「その女アレックス」路線とは異なる手法で描かれた一大歴史絵巻だったため、僕の満足度はさほど高くなかった、失望の度合いのほうが大きかった。そんな記憶もあって続編(第2作)には さほど期待していなかった。

そんな浅はかな展望を本作は見事に打ち砕いてくれる。
第1作が第一次世界大戦後のフランスの混沌に瞬間輝いたピカレスクロマン物語だった。
そして続編である第2作は1933年をコアとした、第二次世界大戦前のフランスのカオスのなかでの復讐劇になっている。
ピエール・ルメートル本人が師と明らかにしているアレキサンドル・デュマの「モンテ・クリスト伯」を僕は思い浮かべるのだった。著者本人は、デュマをはじめ あまたの先人文学者にインスピレーションを受けていると表明している。
物語のなかにその片鱗をかぎ分ける興味もあるとは、さすがピエール・ルメートルである。

物語をざっくり紹介すると、
第1作主人公の姉が主人公、父の銀行を引き継いだところ思いがけない不幸に襲われる。
息子、愛人、使用人、親戚、アウトローらの群像小説の形をとりつつ、ナチス台頭のヨーロッパの危機とフランスの対応を際立たせる手腕。
この三部作は、人間一人 または一族の物語ではない。
ヨーロッパが、フランスが、ドイツが歩んできた壮大な、そして悲惨で無意味な歴史を振り返ろうとしている。

第三部は第二次大戦のヨーロッパ戦線、パリの物語になるという。
大いに楽しみにしている。
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