夜また夜の深い夜 (2014/11/3)

文字数 607文字

2014年10月10日 第1刷
著者:桐野夏生
幻冬舎



新聞連載の「だから荒野」では痛ましいほどの不振にショックを受けた記憶がまだ新しい。
ところがこの「だから荒野」がBSプレミアムドラマとして来年放映されると聞いて二度びっくりしている。
さすが、転んでもタダでは起き上がらない桐野パワーなのかと嘆息している。

最新作のタイトルもそう思ってみると、いささか意味深長である。
長いスランプを意味する夜、深い夜・・・・なんてね。
今作の流れをネタバレする気はないが、生まれた時から母親と世界のスラム地区で逃亡生活をしてきた18歳の舞子の物語だ。
つまるところ、日本国籍、本当の姓名すら定かでなく、教育も受けてない女の子のサバイバルストーリーだ。

その理由は何か?
本編では、ナポリに住み始めた母娘に関わるトラブル、娘の独立・自立、忍び寄る陰謀の影を背景にして、
同じ境遇(密入国)の少女二人(リベリア、モルドバ)との友情も絡ませながら、舞子のアイデンティティに迫るプロットになっている。
作品の大部分は主人公から発信した手紙(同じ境遇だと信じ込んだ女性への手紙)の形式をとっている。
ちょっと信じがたいことだが、いまさらの桐野ジョブナイル小説と推察した。
あの桐野ワールドに紛紛と漂っていた強烈な毒素が、今作には無い。
底辺に生きる少女たちの力強い結束、他愛無いとしか思えないトラブル、
そしてまさかの急転直下のハッピーエンド。
桐野夏生、いまだ再生中。
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