ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ (2017/7/19)

文字数 847文字

2012年3月25日 発行
著者:ジョン・ル・カレ  訳:村上博基
ハヤカワ文庫



ジョン・ル・カレ回想録 「地下道の鳩」に触発され気分も新たに中古文庫をそろえて読み始めた、《ジョージ・スマイリー三部作》である。
歴史的スパイ小説だった「寒い国にから帰ってきたスパイ (1963年)」はじめ初期の作品は記憶にあったが、スパイ三部作はそれもおぼろ。
勢いに任せて取り組んでみることにしたその第1作はキム・フィルビー事件をモチーフにした英国情報部のモグラスパイ狩り物語。
主人公ジョージ・スマイリーが首になり新しく動き出した英国情報部にいる「モグラスパイ(長期間隠れ蓑をまとったソ連スパイ)」は、ティンカー(鋳掛屋)、テイラー(仕立て屋)、ソルジャー(兵士)、プアマン(貧者)、ベガー(乞食)というコードネームを持った幹部のなかの一人。
三部作シリーズではスパイたちの組織内権力闘争と冷戦下(1974年作)の情報戦争が描かれ、
この第1作ではジョージ・スマイリーの復帰と宿敵ソビエト情報部カーラとの戦いが
描かれる・・・のではあるが何せ文体が濃厚で重たくて判りづらく、しばしば休憩を余儀なくさせられる。

ふと、以前も途中でギブアップしたような記憶も浮かんできたりで,
読書というよりも苦行に近くなってきた。
この感覚はトルストイ読書に通じるところがあり(池上冬樹氏の指摘の)、高村薫さんの文章にも似ていることに気付いて、なんだ嫌いじゃないなとも思ったりする。
かようにスパイ小説の舞台で文学を本気で実践しているジョン・ル・カレ、その気概がかわいらしく感じられてくる。
人称が不明だったり、突然変わっていたり、人命も姓で読んだり名で答えたり、無論時間経過は迷うことなくさっさと前後してしまう。
それでも、情報部内の人間関係 師弟関係、不幸な結婚生活を織り交ぜながらジョージ・スマイリーの強烈なスパイ人格を読む僕に刻印する。

さて、次は「スクールボーイ閣下(1977年)」、「スマイリーと仲間たち(1979年)」 、一気に読み進みます。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み