君のクイズ (2024/3/28)

文字数 813文字


 
2022年10月30日 第1刷発行 11月20日 第3刷発行
著者:小川哲
朝日新聞出版
  
著者フォロー五冊目となる本作は、クイズが主人公の異形ミステリーだった。
賞金1000万円のクイズ番組生中継シーンから始まり、一問一答を掘り下げて説明していく・・・例えば:
Q. 仏教において極楽浄土に住むとされ、その美しい声から仏の声を讃える場合に用いれれる、上半身が人で下半身が鳥の生物は何でしょう?
正解は「迦陵頻伽」・・・なのではあるが、
「仏教において極楽浄土に住むとされ、その美しいこ・・・」の時点で早押しボタンを押し、回答し正解する・・・・という場面が冒頭から延々と続く。
主人公がこの決勝戦で最後の最後には敗れる、なんと相手が問題が読まれる前にボタンを押して正解を答えるという衝撃を残して。

当然、このクイズ番組はヤラセだという非難が殺到する一方、これこそがクイズの魔法であるという支持も多数沸き起こる。
負けた主人公が、問題の番組をVTRで一問一問検証する過程で本書は構成される。

そこでは過去の主人公の人生が浮き彫りにされると同時に、優勝者への疑念と畏敬を解明する謎解き形式に移行していく。
本書で出題される問題は一般人には難問としか思えないのだが、クイズマニアにとっては膨大な知識の欠片に過ぎないらしい。それ以上にクイズとは、知識の差を競うものではなくクイズに勝つ技量が必要だという展開になってくる・・・どんどんミステリー仕上げが整えられていく。

最後に主人公が到達した、問題が読まれる前に勝者が回答できた謎に感動する、それはそうだろう、この種の謎解きはかって経験したこともなかったから。

しかし、物語はそこで終わらない。
クイズミステリーと思わせておいて、主人公の生きざまが優勝者との対比できっちりと描かれる・・・
Q:「ずばり クイズとは何でしょう?」
A:「クイズとは人生である」
自問自答する主人公は、クイズオタク以外の何物でもなかった。
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