赤猫異聞 (2015/1/14)

文字数 563文字

2015年1月1日 発行
著者:浅田次郎
新潮文庫



浅田次郎さんの小説を読むには場所柄をわきまえないととんでもないことになる。
たとえば、「地下鉄に乗って」、「終わらざる夏」の長編もそうだが、
「うらぼんえ」「ラブ・レター」「オリヲン座からの招待状」などの短編でも電車内で読むのはご注意!
吊革につかまったままボロボロ涙を流して周りの人から気味悪がられたことがある。

彼お得意の人情ものには、時折幽霊などの禁じ技を使うとはいえ、
心の奥底にある泣き所蛇口をひねられてしまう。
その得意技に加えて、「人の道」をトッピングし始めたのが日本人文化論ともいう時代劇小説。
「壬生義士伝」はその輝かしい転換期の秀作に違いない。

そして、今作は明治維新混乱の真っただ中での「伝馬町牢屋敷」の伝説人情話。
江戸の華といわれた火事が牢屋敷に迫った場合、囚人を解き放ち鎮火後に戻るしきたりがあった。
囚人の中に特別な事情を抱えたもの3名、牢番奉行、与力がこの火事解放(通称赤猫)にどうかかわったのか。
壬生義士伝同様、のちの時代(明治8年)のインタビュー形式で登場人物が真実を語る。
そこに再現された真実に、僕は涙し、感動する。
そう、時代劇の設定において浅田さんは彼の思想を真っ向から開陳している。
涙だけで済まない爽やかさがそこにはあった。
当面浅田時代劇にはまっていくのだ。
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