なんとかしなくちゃ。 青雲編 (2022/12/19)

文字数 1,091文字

2022年11月10日 第1刷発行
著者:恩田陸
文藝春秋


一年近く週刊誌に連載された作品、ただし「青雲編」という括りがついているくらいだから、この後にも「編」が間違いなく予定されているようだ。
テーマは恵まれた才能の女性の一生ということらしいが、青雲編ではW大学卒業まで(1970年~1993年 23歳まで)が展開される。
1970年~1993年という時代を社会人として濃密に過ごした身として強い親近感を持って読ませていただいたし、著者が学んだW大の雰囲気が主人公に投影されていて、時代はずれるものの僕も懐かしく母校W大を思い出してしまった。
本作の形式は通常小説とはちょっと異なっていて、主人公女性を描いていく中で著者が突然コメントを、例えば著者自身の体験や見解を補助説明として挟んでくる。
小説の中に著者の実経験(自伝)が介在する形式になっている。
著者は「灰の劇場(2021)」でも新しい小説形式を試みていたが、多作多分野の恩田世界ならではの積極的執筆スタイルの一つなのだろう、本作もそのパターンに慣れてくると、著者の独り言もさほど気にならなくなってくる、とはいえその度に「あぁ これはフィクションなのだよね」と現実に引き戻されてしまうけど。
物語は梯結子(かけはしゆいこ)23歳大学卒業までの青雲編、名は体を表すとのことで、梯は友好のシンボルである橋であり、その橋を結う(繋げる)という意味だと物語り冒頭に説明される通り、幼い時から我慢できない「キモチワルイコト」の解決方法を考える主人公、
小説では「問題解決及びその調達人生記録」と称して興味深いエピソードの数々が主人公成長とともに紹介される。
それらは祖父母両家、家族、家族の教育方針、学校生活と友人たちにかかわる問題の認識・解決方法模索・実行・評価の流れだ。
どれをとっても僕にとっては経験はおろか想像すらしたことのない痛快展開満載だった。
途中から気づいたのは、本作(シリーズ)の目指すところは世界で活躍する人間、もっと言えばスーパービジネスパーソンになるための条件と教育がギッシリと詰め込まれていることだった。
僕のような年金生活者にはセンスオブワンダーの興味でしかないが、若い世代の方々にはもしかして役に立つコンテンツが詰め込まれているような気がした・・・もっとも小説を読む若い人達が少ないことを承知はしているが。

少なくともフィクションの世界であろうとも梯結子の今後の活躍を知りたいと切望する。
現時点(2022年)まで書き進めていただければ、梯結子50歳超のスーパネゴシエイター大成が期待できる。
恩田陸ワールドに新しいジャンルが誕生した。
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