スウィングしなけりゃ意味がない (2017/6/6)

文字数 974文字

2017年3月2日 初版発行 、4月20日再版発行
著者:佐藤亜紀
角川書店



It Don't Mean A Thing ( If It Ain't Got That Swing )
デューク・エリントンの名作がタイトルになっている。
各章の題も洒落ている:
Ⅰ ピック・ヨアセルフ・アップ (Pick Yourself Up)
Ⅱ 踊るリッツの夜 (Puttin'on the Ritz )
Ⅲ アマポーラ(Amapola)
Ⅳ 奇妙な果実(Strange fruit)
Ⅴ 夜も昼も (Night and Day)
Ⅵ 残念なのは誰 (Who's Sorry Now ?)
Ⅶ 赤い帆に黒いマストの船 (Blutrot die Seagal, Schwarz der Mast )
Ⅷ 楽しくない? ( Ain't We Got fun ?)
Ⅸ アラバマ・ソング (Alabama Song)
Ⅹ 世界は日の出を待っている ( The World is Waiting for the Sunrise)

物語は第二次大戦中1941年から1945年の降伏までのハンブルグの若者の生活を描いている。
そこには、ジャズ、スウィングを愛してやまない不良少年少女の自由への戦いが煌めいている。
彼らは、軍需会社、造船会社、弁護士、高級軍人の放蕩息子だったリ、ユダヤ人の子供だったリ、はたまたヒットラーユーゲントのスパイだったり。
全体主義、独裁主義の息苦しさに歯向かう子羊たちの群れに過ぎないのだが、戦況の悪化に伴いその抵抗がエスカレートしていく。
兵隊にとられて無駄死にしないことを第一の目標に、統制下での闇商売に精を出す彼らのタフネスに驚かされる。
彼らを単なる能天気な金持のバカ息子とすることなく、偏見のない理性的判断力と、
経済活動優先のサバイバルはドイツの合理主義が垣間見えていた。
それにしても、だったらなぜナチスに政権を委ねたのだろうか?
ハンブルグ空襲の民間人被害はじめナチス戦時下の苦悩と困窮生活もしっかりと再現されていた。

ドイツの戦争青春物語だが、作者は日本人、
先日手にした須賀しのぶさん作「神の棘」同様
近年小説の舞台が時空を超え限りなく拡大している。
日本の戦時下では想像することすらかなわない、エキサイティングな顛末だった。
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