ブルーバード、ブルーバード (2019/3/8)

文字数 915文字

2018年12月15日 発行
著者:アッティカ・ロック 訳:高山真由美
早川書房



ハヤカワ ポケット ミステリー 、裏表紙の作品紹介コピーには:
『テキサス州のハイウェイ沿いの田舎町で、二つの死体が相次いで発見された。
都会から来た黒人弁護士と地元の白人女性の遺体だ。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンは、FBIに所属する友人から、事件の周辺を探ってほしいと頼まれ、手現地に赴く・・・。愛と憎悪、正義の在り方を卓越した力量で描き切り、現代アメリカの暗部をえぐる傑作ミステリー。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編、英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞、アンソニー賞長編賞の三冠受賞作。』

著者ロックは黒人女性、長編小説4作目での快挙である。
彼女はTVドラマ「Empire 成功の代償」にも脚本を提供しているプロデューサーでもある、「今の時代」が生み出した黒人ヒロインであろう。
「今の時代」というのは、トランプ大統領によるアメリカ・ファーストというスローガンのもとに沸き起こっている、人種・性差別の復活助長、信仰の自由介入に代表される反自由・平等のトレンドである。いまアメリカ全体がかの有名なKKKに代表されるようなヘイトクライムの多発に立ちすくんでいるようにも思える。

本作は、保守的なテキサス州の東の端の郡、その中でも小さな田舎町での人種の異なる遺体発見から始まる。
先日拝見したシネマ「グリーン・ブック」でも感じたのは、僕はアメリカの本当の姿などわかっていないことだった、そのことを本書でも再認識させられる。
主人公の黒人テキサスレンジャーがロースクールの代わりに司法の現場に携わろうとするのは、
人種差別を自分の手で摘発したい、それが古郷テキサスのためでもあると一途に信じているから。その信念は、逆に複雑な社会構造のなかで空回りする。

主人公の由緒正しい一族、その一員になれない母親、彼を危険なレンジャーから引き戻そうとする別居中の妻、被害者黒人弁護士の妻への淡い想い、人種差別さえなければ決して起きえなかった事件なのか?
それとも人間の愛憎に人種は無関係なのか?
黒人による、黒人のためのミステリー、それはほとんど文学へと昇華されていた。
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