冬の夢 (2016/11/24)

文字数 712文字

2009年11月25日 初版発行
著者: スコット・フィッツジェラルド  訳:村上春樹
中央公論新社



フィッツジェラルドが「グレート・ギャッツビー」を書く前の5年間(1920年~1925年)の短編集。
いわゆる、プレ・ギャッツビー時代、商業雑誌の求めるままに彼があまたの短編を書き散らした時代でもあった。
しかし本集は、村上春樹さんの強い思い入れにより、
その最盛期においても商業雑誌には買ってもらえなかった作家意志の強い作品集になっている。   
収録されているのは:
●冬の夢
まるでグレート・ギャッツビーのための習作の印象が強い。
わがままなお金持ちの女性に翻弄されながらも愛してしまう若者の心情が悲しい。
●メイデ―
中編に近いボリュームで、1919年メーデーの一夜に集う群像小説。エスタブリッシュメントと持たざる者の対比が鮮烈だ。
●罪の赦し
本作は、グレート・ギャッツビーのプロローグとして書いたらしい(村上ノート)。
ジェイ・ギャッツの少年時代の無垢な精神とロマンチストの傾向がうかがえる。
●リッツくらいの大きなダイヤモンド
ピカピカのファンタジーだ。その訓えるところは強欲は破滅につながるという極めてまっとうなもの。底意地の悪さが記憶に残りそうだ。
●ベイビー・パーティー
アメリカ人の典型的良識を確認するような物語。大切なものを守るためにはおくすることなく正直であれという、傲岸につながるかも。

先日映画「ベストセラー編集者パーキンズに捧ぐ」で落ちぶれ果てたフィッツジェラルドが生活のために小説を書くシーンがあった。
心の病の妻を抱え、自らもアルコールに蝕まれる中で、フレーズが書けない苦悩に胸が痛んだ
・・・これはポスト・ギャッツビー時代だった。
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