マチネの終わりに (2019/6/25)

文字数 836文字

2019年6月10日 第1刷
著者:平野啓一郎
文春文庫



本作をして、あまりにも古典的戀愛小説でありながら、しっかりと現代ラブストーリーに根付きながら、畏敬を禁じ得ない未来哲学物語、だと思う。
なるほどに、ベストセラーになったのも納得がいくのだった。

その感想を申し上げる前に、一言僕の言い訳を・・・
本作は我が愛読する毎日新聞日曜版に連載されたもの、当時僕は全くそれを無視してしまった、そして今になって手に取る。もともと 連載小説が性に合わない、小説はその面白さに憑かれたように一気に眠らずに読むくらいが僕のスタイルだったのが、言い訳の①。
作者 平野啓一郎さんのことに興味がなかった、今もそうだが新しくお気に入りの作者を作らないことにしているのが、言い訳の②。
ところが、過日平野さんの「ある男」を読んでその小説構成力に魅了された (彼に手を付けたのも毎日新聞の書評だったのは皮肉だが)、言い訳の③。
文庫本になると聞いた、映画化の際によくあるケースである、11月1に公開されるらしい、主演が福山さん、言い訳の④。

閑話休題、本作を思いっきりざっくりとまとめると、
美貌のハーフ国際ジャーナリスト洋子、幼い時から天才の名前を欲しいままにしてきたギタリスト蒔田、二人のアラフォー美男美女が織りなす哀しくも崇高な愛情物語。
冒頭に述べた通り、古典的なすれ違いが引き起こす恋の行方定まらない展開、
そんな二人を繋げるのも、引き裂くのも最新の近代コミュニケーション手段だったことの裏腹、
結婚していても、子供がいても愛し尊敬する男女には何も障害物はない(?)という新しい愛の在り方。

作者の細やかな仕掛けに中盤まではハラハラドキドキするも、だんだん腹が立ってきた
・・・あまりにも手垢に塗れた展開になってきて。
ところが僕の予想とはまるで違ってくる、どんどんと。
そこまで人を許すことができるのか?
自分の想いを誤魔化して生きていけるのか?

そして、ラストシーンのカタルシス。
僕には彼らの未来を想像するしかなかった。

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