喪失 Gone (2015/7/5)

文字数 649文字

2012年12月15日発行
著者:モー・ヘイダー
早川書房



2012年のMWAアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)作品。
ロンドン重大犯罪捜査隊キャフェリー警部シリーズとのことですが、僕は本作が初めてです。
連続幼児誘拐にまつわる異常な捜査状況と、最後の事件終結パートのダイナミックスに感心しました。
前述のとおりエドガー賞 最優秀長編部門受賞です、ハヤカワミステリー版でも
500ページ近いボリュームにはちょっと苦労しました。
正確に言うと、このページ数自体は大したことはないのですが、文章構成が特異なため
一気に読み進むことができませんでした。
ミステリー作品にみられる、ヒントの言葉、センテンスがストレートには表現されていないのです。
油断していると大事な表現を読み飛ばしてしまい、作者の流れについていけなくなります。
その意味では曲者作家なのでしょうが、この心理描写や、オカルト的ミステリーによって、
人間描写の深みを味わうことができます。
言い換えれば、読む側に想像力がないとつまらないかもしれません
・・・まぁ それほどの難物でもありませんが。
シリーズ主人公の警部は、幼い時に兄を幼児性愛犯罪によって殺され
いまだ死体が発見されないというトラウマがあるという設定になっています。
同じように娘の死体を探し続ける謎の男と警部の交流など、
一般的な警察小説とは趣が違っています。
警察組織の隠蔽事件、被害者家庭(複数)の複雑な事情等、周辺エピソードが
最後に一点に集まるところは見事です。

エドガー賞に値する本格ミステリーでした。
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