道徳の時間 / 園児の血 (2016/8/26)

文字数 578文字

2016年6月11日 初版第1刷発行
著者:前田司郎
キノブックス



過日 「ふきげんな過去」という映画を拝見してその脚本にいたく興味を惹かれてしまったことがあった。
監督も兼ねていたのが前田司郎さん、元々は劇作家だということを知って納得していたが、
三島由紀夫賞の小説家だということは不勉強だった。
せっかくの機会なので、新作を手にしてみた。

短編が2作、「道徳の時間」と「園児の血」、いずれも子供の世界を子供の目線で大人のユーモアをふんだんに塗した変な小説だ。
この「変さ」が前田さんの持ち味なのだろうか?、ちょっと病みつきになりそうな味付け、香りがする。
「道徳の時間」では小学校5年生の男女が「カンチョー!」遊びの中で性の兆候に恐れ戦く、
その中に入り込む教師のKY がむなしい。
小学生にとって先生は絶対権力者であり、生徒・教師はその前提で学級生活をやり過ごしていく様に、自分自身の姿が思い出される恐怖があった。

「園児の血」は幼稚園児(年少4歳)の男の子のハードボイルドな園内の暴力抗争が愉快だ。
語り口は、あの仁義なき戦いとそっくり、孤高の一匹狼ヤクザなんだけど、
やっぱりそこは年少園児の本質があらわれるカタルシスが絶妙だった。

この2作、子供のころから人間は純粋さや優しさや温かさを、
少しづつ失くしていくのだというホラーなのかな。
圧倒的な「変さ」に僕も脳がしびれてきた。
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