夢と思い出の狭間

文字数 714文字

 ふと、以前あったことを思い出す。
 それは人生の中で一番幸せだった瞬間。

 初めは苦手だったけど、凄く好きな人がいたんだよね。話しかけられる度、なんと返していいのかわからなくて。いっぱい話してくれるから、俺はある時その子に『俺のことが大好きなんだね』と言ったんだよ。
 まあ、それは別にその子が自分を好きだと思ったからではなく、冗談のつもりではあった。

 それが、何度か繰り返すうちに大好きと言ってくれるようになって。ノリかな? って思ってた。
 何度繰り返したんだろうね。
 いつしか、自分のほうがその子を好きになっていて。その好きが、冗談ではなければいいのにって思いはじめてしまったら冗談すら言えなくなった。

 結局上手くはいかなかったんだけどさ。
 俺の性格に問題があるからね。
 もっと思っていることを話していれば、もう少しマシな結末があったかもしれないけど。
 縁がないものは仕方ない。そういうものなんだよ。
 勇気を出すことは難しい。誰よりも自分を理解してくれていた人だとは思う。 
 遠慮や配慮から黙っていた自分は本当に理解されたかったことを、理解して貰うことはできなかったけど自業自得。
 価値観は合わないし、俺がもっとも恐れていたことも分かってもらうことはできなかった。言わないんだから分かるわけないんだよね。

 別にやり直したいとは思わない。
 結果は変わらないんだよ。どんなにやり直そうとも。ただ、多少は成長するかも知れない。
 
 人が人を好きになるのは奇跡
 両思いになるのも奇跡

 人を好きになりたいなとは思うけれど、両思いになりたいとは思わない。

 憧れねえ……
 俺には憧れられるような要素は何もなかったと思うけどね。そんなことを思う。
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