普通に生きられたなら

文字数 1,325文字

 人は新しく記憶するために忘れる生き物。しかし記憶力が良く、忘れることができなかったなら?

 数ヶ月前、数年前の心の痛みをまるで数秒前のように思い出す。忘れられないから現実逃避するしかない。
 好きなものを嫌いになることはない。飽きることも知らない。

 時々、自分は本当に人と同じ速度で生きているのだろうか? と思うことがある。
 作業が早いことは、とても良いことだとは思う。何をやっても、『早いね』と言われる。
 コツさえ掴んでしまえば、なんだって早くできるものだ。それが両利きのお陰なんだと気づいたのは割と最近だが。

 人にばかりやらせようとする人が嫌いだ。どんなに仕事が出来ようが、やはり自分でやることに意味がある。そしていちいち干渉してくるやつも好きじゃない。
 お前はお前のことをやればいい。

**

 恋愛に不向きな自分が柄にもなく、恋をした。初恋だった。初恋は叶わないとは言うがその通りだったなと思う。
 好きな気持ちは変わらなくても、別にどうこうしたいとは思わないが後悔していることはある。もっと自分の考えていることを話せば良かったな、と。
 例え理解されなくても。

 自分の特技は空気を読むこと、察することだ。察して相手に合わせるということではない。察して、空気を変えたり方向を変えたりするのが俺。
 簡単に言えば、フラグをあえてへし折るというような。
 中でもよくやる手が【嫌われるように仕向ける】と言うこと。もちろん、嫌われるように仕向けるのは俺のことを、である。
 汚いやり方だとは思うが、嫌われれば相手は離れる。つまり、自分から引き離す為に嫌われるように仕向けるのだ。

 元々好かれたいわけじゃないし、面倒な感情を向けられるのは迷惑。好きだの友達だのという言葉を向けられると、吐き気がする。
 相手が単なる寄生虫にみえてくる。
『あんたのいう、好きや友達というのは【利用価値のある人間】つまりは【自分に都合のいい人間】のことを言うんだろ?』 
 そう、思うから。
 
 正直、仲良くしてくれる人たちは、いちいちそんな陳腐な言葉を投げかけたりはしない。

 そんなことを考えて生きてるので、もちろん友人なんていないし、欲しいとも思わない。別に誰とも交流を持たないわけでもないし。
 ただ、そんな風に型にはめたがる愚民と付き合いを持ちたくない。

 自分が何かをして欲しいならまず、自分から何かすればいい。ただそれだけ。

**
 
 自分は、配慮と我慢と相手に合わせることでバランスを取っている。
 しかし、それは誰にでもじゃない。

 言うべきだったこと。
 誰にでもそうじゃないってこと。

『君のために時間を作るよ』

 それは自分にとって愛だった。
 そして、許すことも。

 自分は他人を決して許すことのない人間である。別に怒ってるわけでもないが。許す必要がないから、許さない。それだけ。

『愛しいから、仕方ないなで許せる』
 思うところはあっても。

 今思えば、なんであんな多忙な時期に恋愛なんてしたんだろ? って思う。
 それがトラウマでもう、忙しくはしたくないんだけどね。

 もし、何か伝えることが出来るなら。
『好きでいてもいいよね』
と言うだろう。

 俺は良い人ではないので、彼女の幸せなんて願わないけど。
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