2.イスラエルの民、出発する

エピソード文字数 766文字

モーセは義理の兄弟であるホバブに言った。

「どうか私たちと共に来てください」

しかしホバブは故郷に帰ると言う。

モーセはホバブに懇願した。

「どうか私たちを見捨てないでください」

モーセたちイスラエルの民はまだシナイ山にいるんだけど。

そこは右も左も荒野で、どう進めばいいか不慣れな人間には難しい場所。

地図も方位磁針も無い時代さ。

遠くに行くには案内人が絶対に必要だったろうね。

断られてるやん。

大丈夫なん?

モーセの懇願で、結局付いて来てくれるんだ。
これから数十年にわたる旅になるのに……。

めちゃくちゃいい人だよね。

イスラエルの民は出発した。

しかし泣き言を言い始めた。

それは神様にとって不快であった。

文句ばっかやからな。

神様が苛立つんも分かるわ。

神様は怒り、その怒りの火が燃え上がり、宿営の端を焼き尽くした。
いや、気ぃ短いな。
ほんのちょっとの不平不満ですら許さないぞという意思の表れだね。
マナ以外に食べるものもない。

そう言って民は氏族ごとに涙した。

モーセは神様に、民に肉を与えてほしいと懇願した。

神様は民に肉を与えることとした。

全知全能の神やからな。

お肉くらい、いつでも食わせたるわ。

ところがこれは悪い結果をもたらしてしまう。
風が起こり、海の方から鶉(うずら)が運ばれてきた。

民は立ち上がり、終日終夜、鶉を集めた。

その鶉を食べている最中に、神様の怒りが燃え、疫病で民は討たれた。

また民を殺している……。
お肉が食べたいだけなんや!

神はそれすらも罪と仰せられるんかー!

常識的な感覚で読むと、鶉に何かしら病原菌が含まれていたのかもしれないね。
キリスト教徒的に言えば、人の欲望を戒める、という解釈も成り立つ。
とは言え、マナ(たぶん虫のうんこ)だけで飢えを凌ぐ人たちに対して、

戒めるほどの欲望があるかどうかは疑問だけどね。

鶉かて、肉としてはえらい小さいしな。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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