10.あとがき

エピソード文字数 1,253文字

わたしたち強い者は、強くない人たちの弱さを担うべきであり、

自分の満足を求めるべきではありません。

キリストも自分の満足を求められませんでした。

むしろ、「あなたを謗る者の謗りがわたしの上に降りかかった」

と書き記されているとおりです。

具体的には『詩編』に書かれている。
『詩編』第69章10節

あなたの家を思う熱意がわたしを食い尽くし、

あなたを謗る者の謗りがわたしに及びました。

強い人が弱い人を助ける。

大事なことやな。

ただ、強い人言うても別に無敵ってわけやない。

苦しいことも悲しいこともあるやろ。

みんなのためや言うて頑張っても、それが非難されたりしたら辛いもんやで。

他人のために積極的に関与する。

当人は善行のつもりでも、反発を生むことは多々ある。

イエスは弱い人たちを救いたいという熱意を持っていた。

それこそが受難の原因で、自身の満足を求めなかった証拠だと言うのさ。

前の時代に書かれたことはすべて、わたしたちへの教訓として書かれたもので、

聖書が与える忍耐と励ましによって、わたしたちが希望を持ち続けるためです。

「前の時代に書かれたこと」とは、つまり旧約聖書のことかしら?
おそらくね。

神学者のヨハン・アーントはこう言っている。

「旧約聖書は我々の教育のために書かれたものだ」

「しかし我々は忍耐を学び、励ましを得て、祝福された希望を獲得する」

希望ねえ……。

大半は希望ではなく睡魔を招き寄せているのではないかしら。

キリスト教も何もないところから生まれてきたわけちゃう。

これまでの色んな聖書が土台にあって育まれたもんなんや。

元々は子弟教育で使われとったけど、時代を経てみんなの希望になったんや。

「すべての異邦人よ、主をたたえよ、すべての民よ、主を賛美せよ」
この言葉もまた『詩編』の引用だ。

『詩編』第117章1-2節

すべての国よ、主をたたえよ。

すべての民よ、主をほめたたえよ。

わたしたちへの主の慈しみは力強く、

そのまことは代々に及ぶ。

ハレルヤ。

「国」が「異邦人」に差し替えられとる。

外国のキリスト教徒を重視してるって印象付けたかったんかな。

『ローマの人々への手紙』の主題はこのへんで終わりだ。

後は「あとがき」と「挨拶」が続く。

その「挨拶」の前にちょっと特殊な内容があるんだ。

フェベという女性を推薦して、彼女への助力を頼んでいる。

フェベ(Phoibēn)という名はギリシア語で「純粋」「輝く」という意味ですわね。

ギリシア神話におけるティターン神族の女神、ポイベー(Phoibē)とも符合いたします。

ポイベーの名は「輝ける女」を意味しますわ。

そのフェベってのはどんな子なんやろ。
パウロ書簡をローマに届ける任を負った人物……。

ではないかと考えられているらしい。

文章からして自然な考えだと思うよ。

わたしたちの姉妹、フェベのことをよろしくお願いします。

主と結ばれたものとして彼女を迎え入れてください。

彼女があなた方の助けを必要とするなら、どんなことをしても助けてあげてください。

なぜなら、多くの人々、また、わたし自身の恩人でもあるからです。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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