12.サウルの殺意

エピソード文字数 1,041文字

サウルはダビデを殺すようヨナタンに告げた。

しかしヨナタンはダビデを愛していた。

彼はダビデのために弁護し、サウルもその言葉を聞き入れた。

今までは自分の意思だけでダビデを殺そうとしてきた。

槍を投げたり、敵地に追いやったりね。

けれどついに周囲まで巻き込み始めたんだ。

せやけどヨナタンとダビデは愛し合う仲やからな。

殺せ言われて、はいそうですかとはならへんやろ。

まったくもって。

愛は何ものにも勝るのです。

しかしヨナタンに説得されたくらいでサウルの心は変わらない。

一時的に聞き入れても、またすぐに悪霊(あくれい)が彼に囁くのさ。

再び戦争があり、ダビデがペリシテ人を敗走させた。

またも神が遣わした悪霊(あくれい)がサウルに臨んだ。

サウルは槍でダビデを突き刺そうとした。

ダビデは逃げ、その夜は難を逃れた。

また神様がいらんことしよる。

この悪霊っちゅうのも、よう分からんな。

ムカムカデかな?
何でも妖怪のせいにしたらあかんで。
サウルがダビデを殺そうとするので、ダビデの妻ミカルはダビデを窓から逃がした。

そしてテラフィムを寝床に入れ、ダビデが病気で寝込んでいるように見せて時間を稼いだ。

テラフィムってのは何や?
英語では「Idol」や「Household deity」と訳される。

これをそのまま日本語にすれば偶像だね。

偶像?

それ、あかんやつやん。

けれどこの場面では特に問題にされない。

サウルはただダビデを逃がしたことだけを責める。

だからテラフィムがあること自体は普通のことなんだ。

実際のところ、テラフィムが何なのかは難しい。

オランダの学者、カレル・ヴァン・デル・トーン(Karel Van der Toorn)は、祖先の人形だったのではないかと言っている。

きっと何かの名残りでしょうね。

フェティシズムの匂いがいたしますわ。

ふぇっ!?
ミカちゃん。

フェティシズムというのは「呪物崇拝」という意味だよ。

これを「性的倒錯」の一種としたのは精神科医ジークムント・フロイトの罪だね。

人形を介して祖先の言葉を聞き、それを助言とする。

そのような行為がいつしか神の預言へと発展した。

そんな風に考えられたりする。

色々あって、むずいな。

よその神様を祀るのはアウトやけど、ご先祖様の像はセーフってことなんやろか。

そうかもしれないね。

時代の流れと共に人の意識も変わる。

断片的な情報で全てを断ずることは出来ないものさ。

結局、ダビデはサムエルのところに逃げて匿ってもらう。

サウルも追いかけてきたけれど、ダビデを捕まえることはできなかった。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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