9.女性は教会で黙っていなさい

エピソード文字数 1,453文字

聖なる人々のすべての教会で行われているように、女性は教会で黙っていなさい。

女性には話すことが許されていないのです。

律法も言っているように、女性は従いなさい。

もし、何か学びたいことがあれば、家で自分の夫に尋ねなさい。

教会で話すのは、女性にとっては恥ずべきことです。

神の言葉は、あなた方から出たのでしょうか、あるいは、あなた方にだけ伝わったのでしょうか。

これはこれは。

もし現代でこのようなことを言えば袋叩きにされそうですわね。

Twitterでつぶやけば炎上案件でしてよ。

女は黙ってろってことか。

今まで女預言者とかもおったのに。

これやとユダヤ教よりも厳しくなってまうやんか。

ここだけだとパウロは女性を男性より低く見ているように読めるね。

けれどこの箇所は同じ書簡内での矛盾が指摘されてもいるんだ。

『コリントの人々への第一の手紙』第11章5節

一方、女がみな、頭に何もかぶらずに祈ったり預言したりする時は、

自分の頭を辱めることになります。

それは、髪を剃っているのとまったく同じことだからです。

女は頭にかぶり物をすべしという話のところですわね。

なるほど、女が「預言」することを前提とした物言い。

このように言っているのに、後から「黙っていなさい」は辻褄が合いませんわ。

つまり、この「黙っていなさい」はそのままの意味ではないってことか?
金口イオアンは「雑談」を禁じるものだと解釈したらしい。

彼は4世紀のキリスト教神学者にして、コンスタンティノープル主教だったね。

市場や公衆浴場でのお喋りを教会に持ち込んでくれるなということかな。

女がお喋りとは、昔から言われていることですものね。

昨今ではそれに科学的な裏付けまでされようとしているとか。

FOXP2(フォックスピーツー/Forkhead box protein P2)というたんぱく質がそれです。

これは言語発達との関連が示唆されるものですが、女性が男性の3割増しだとか。

ちなみにこのたんぱく質は同名の遺伝子によりコードされております。

はえー。

ビヨンデッタ、なんか難しいこと知っとるんやな。

お褒めにあずかり光栄ですわ。
他にも解釈はある。

今に比べて女性の教育レベルが低かった時代だ。

基本的な質問で集会が滞るのを避けるため、女性には「夫に尋ねなさい」と言ったとか。

コリントがまだまだ異教の地であったことに理由があるという説もある。

キリスト教に比べて騒がしい(Bacchanalian)スタイルの儀式が一般的で、

そういうのを持ち込んでしまわないように戒めるものだとか。

他にも色んな解釈がありそうやな。

てか、パウロも言葉不足なんちゃう?

書きながら誤解されそうって思わへんかったんやろか。

この箇所自体、パウロの弟子が後から書き加えたという説もある。

だとしても、じゃあ何を言ってるんだって話だけどね。

そもそも、これまでも何度か女性は登場していますわ。

それもけっこう教会内で重要な地位を持って。

『コリントの人々への第一の手紙』第1章11節

わたしの兄弟たち、実は、あなた方の間に争いがあると、

クロエの家の人々から聞かされたのです。

クロエは女の名前ですわね。

このように集会を行う「家」のホスト役に女性が選ばれることもあるわけです。

説が色々あるにせよ、そのような人物が完全な沈黙を強いられるなどありえましょうか。

それはそんな気ぃするなあ。

完全に黙ってろって言ってたら、同じ手紙の中で矛盾になるし。

何かしらの意図があって書いたことなんやろ。

ひょっとしたら、手紙の相手とは共通認識があったんかもしれへん。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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