2.系図(アブラハム~ダビデ)

文字数 1,486文字

アブラハムの子はイサク
イサクっちゅうたら、自分の妻リベカを妹言うて嘘ついた奴やな。

もし誰かがリベカを妻にしようとしたら神様の天罰が下るとこやった。

アビメレクが気付いたから未遂で済んだものの。

(過去ログをチェック……)

あらまあ。

しかも、アビメレクは過去にアブラハムに騙されていますわね。

その経験があればこそ、イサクの美人局にも気づけた、と。

このイサクの異母兄がイシュマエルで、アラブ人の祖とされている。

だからイスラム教ではイサクよりもイシュマエルを重視しているのさ。

イサクの子はヤコブ
ヤコブもまた、兄エサウから父の祝福を騙し取った者ではありませんか。

このような系図を誇るなどと、子孫もさぞ騙すことに長けているのかしら。

古い神話の世界で、相手を騙すことは必ずしも悪ではない。

むしろ知略に長けた行いとして称賛されたりする。

エサウの子孫はエドム人やったな。

こっから長い因縁の日々が続くんや。

ヤコブの子はユダとその兄弟たち
ユダはヨセフの兄弟で、ユダ族のご先祖様や。

ユダ王国、そんでユダヤ人とかいう名前の大本になっとる。

ユダの子はタマルによるペレツとゼラ
系図の中に妻の名が現れていますわね。

何か意図でもあるのかしら?

『創世記』第38章でユダは兄弟たちとは別れて暮らしていた。

そしてそこで見初めた女性を娶っている。

最初の妻はカナン人のシュアだったけれど、タマルもおそらく異邦人だ。

異なる民族の血が入っている。

そしてそれを強調している、と。

一つの民族のものではない……

ということが、キリスト教にとって重要なのさ。

ペレツとゼラってどんな人やったっけ。
彼らは双子だ。

出産時、ゼラが最初に手を出したんだけれど、引っ込めてしまった。

その後にペレツが出て来た。

その名は「違反」「破れ目」といった意味がある。

先に生まれた方が長子になるのでしょう?

まるでヤコブのような狡猾さ。

将来有望な赤ん坊ですわね。

ペレツの子はヘツロン、

ヘツロンの子はアラム

ヘツロンとアラムについて詳細な記述は見当たらない。
アラムの子はアミナダブ
アミナダムの娘エリシェバ。

彼女はアーロンの妻となる。

アーロンはモーセのお兄ちゃんやったな。

アミナダブはアーロンの義理のお父さんになったってことか。

アミナダブの子はナフション
ナフションは『民数記』においてユダ族の長として登場する。

エジプト脱出後の過酷な日々を乗り越えた人物だ。

ナフションの子はサルモン、

サルモンの子はラハブによるボアズ、

サルモンはサルモン自身よりか、ラハブの夫として有名やな。

ラハブはエリコ侵略の手ほどきをしたカナンの娼婦や。

娼婦であっても、自分たちに都合よく働く者は認める。

実に合理的な判断ですこと。

そしてラハブもまた異邦人だね。
ボアズの子はルツによるオベド
『ルツ記』の話は平和で良かったなあ。

ああいう心温まる話は他に全然あらへん。

未亡人ルツの義母に対する献身を見たボアズが彼女を引き取った。

ルツはモアブ人で、異邦人ですわね。

オベドもただその名を遺すのみ。

しかしダビデの祖父というだけで、随分と立派な印象があるもんだね。

オベドの子はエッサイ
そして当然、エッサイもまたダビデの父として知られていますわね。

ただの羊飼いが随分と出世いたしましたこと。

エッサイはベツレヘムで暮らす羊飼いだった。

末っ子のダビデが王になるとは思ってもみなかったろう。

エッサイの子はダビデ王である
そしてついにダビデ登場。

士師でもある預言者サムエルに油注がれて王様になるんや。

なかなか波乱万丈の人生だけどね。

先王サウルとの対立、想い人ヨナタンとの別れ。

王となった後も息子アブシャロムの反乱などに大忙し。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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