6.偽預言者ハナンヤ

エピソード文字数 1,030文字

エレミヤはその過激で不快な預言から敵が多かった。

ある日、彼はイスラエルの民に捕らえられて、死の危機にさらされる。

祭司たち、預言者たち、そして民はエレミヤを捕らえてこう言った、

「お前は必ず死ななければならない。

なぜお前は主の名によって、この神殿がシロのようになり、

また、この町が廃墟となって住む人もいないと預言するのか」。

妙薬口に苦しと言いますが、エレミヤのそれは激辛。

飲み込めず、吐き出してしまいたくもなるのでしょう。

エレミヤはこのままやと死刑になってまう。

神様は助けてくれへんのか。

残念ながら神は来ない。

召命の時に「お前を必ず救い出す」って言ったのにね。

その代わり、イスラエルの長老たちがエレミヤの弁護にあたった。

長老たちは過去の事例を引き合いに、エレミヤの死刑は誤りだと指摘したのさ。

(ユダ王ヒゼキヤの時代に預言者ミカが災厄の預言をした)

ユダの王ヒゼキヤ、あるいはユダのほかの誰かが彼を死刑にしたか。

いや、王は主を畏れ、主に懇願したので、

主は彼らに下すと仰せになった災いを思い直されたではないか。

つまり、やっかいな預言にもきちんと向き合えと。

そしたら災いを避けることも出来るっちゅうとるんやな。

しかし残念ながら神の「怒りの杯」はとうに渡されました。

イスラエルの民は逐次、バビロニアに送られ、捕囚の身となりましょう。

バビロン捕囚は一回で済むような事業ではなかった。

連れ去られた者と、エルサレムに残された者がいる。

そんな状態に陥りながらも楽観論を唱える預言者がいた。

(ギブオン出身の預言者、アズルの子ハナンヤの預言)

「主はこう仰せになる、『わたしはバビロンの王の軛(くびき)を打ち壊す』と」

さしたる努力も無しに神が助けてくれると。

まあ、そう信じたくなる気持ちも理解できます。

弱者に出来ることなど祈ることくらいですもの。

こんなんエレミヤは承服しかねるやろ。
もちろんだとも。

エレミヤは神の預言によりハナンヤに死を宣告する。

主はこう仰せになる、

『見よ、わたしはお前を地の面(おもて)から消し去る。

今年のうちにお前は死ぬ。主に逆らって語ったからだ』

そしてハナンヤはちょうど二ヶ月後に死んだ。
あっけないこと。

もう少し悪役として粘れないものかしら。

ハナンヤかて、別に悪意があったわけちゃうと思うで。

皆を安心させてやりたいって善意からの言葉やったかもしれん。

ただ、それが事実に基づかんのがあかんかったんや。

良い人が良い結果をもたらすとは限らない。

ただ、往々にして人は見誤る。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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