10.士師エフタの悲劇

エピソード文字数 1,118文字

エフタは娼婦の子であるがゆえにギレアドを追われた。

ギレアドがアンモンの子らに攻められた時、エフタは指揮官になるよう請われた。

しかしエフタは「何故今さら」と話を退けた。

いらん言うて放り出したんを、都合ええ時に戻れとか。

そら誰でも断るやろ。

まして命がけのことやったらな。

町を追われたエフタは外でならず者たちとつるんでいた。

要するに彼は、乱暴な連中をたばねるだけの力があったわけだ。

エフタはギレアドの頭(かしら)になるように求められた。

彼はギレアドに戻ることにした。

あら、意外にあっさり戻るのね。
さらっと読み流すとそう見えてしまうよね。

実は「指揮官」と「頭」では大きく意味が違ってくる。

「指揮官」はあくまで戦時における長なんだ。

けれど「頭」は平時における長となる。

つまりギレアドはエフタに全権を委ねたってわけ。

それくらい追い詰められとったっちゅうことやろ。

逆に言うたらエフタにとっては火中の栗。

それを取りに行くくらいに自信があったんやろか。

勝利のためエフタは神様に誓った。

「戦のあと家に戻り、迎えに出る者を神様への生贄にする」と。

エフタはアンモンの子らの町を徹底的に打ち破った。

アンモンの子らはイスラエルの子らに屈服した。

あらあら。

下手に約束などして大丈夫かしら。

神様との約束は悪魔よりも恐ろしいのよ。

勝利で一件落着、とはいかんのやろなあ。

ビヨンデッタの言う通りやろ。

いらん伏線はられてる気ぃしかせえへんわ。

エフタが家に帰ると、何と彼の娘がタンバリンを鳴らし、踊りながら彼を迎えに出た。
あかん……。

悲劇的やのに妙にコミカルで笑いそうになってまう。

気持ちは分かるよ。

そもそも、勝って帰ったら娘が出迎えるとか想像つくだろって思うよね。

だからこれは悲劇じみているけれど、はなから娘を生贄とする気だったんじゃないかな。

そうでなくても誰か大事な人にはなる。

まさか戦争で勝って帰って来たところを、奴隷や家畜が出迎えるはずもない。

蠅にでも出迎えさせれば万事解決でしたのに!
それはさすがに神も怒るでしょ。
娘はエフタに二ヶ月待つよう願った。

己が処女であることを悲しむためである。

二ヵ月後に戻り、エフタは娘を神様に捧げた。

ここで言う「処女」とは「未婚」という意味だね。

古代日本でもかつて「処女」は「未婚」というくらいの意味だった。

経験の有無は問われていない。

とは言え、イスラエル人にとって婚前交渉はタブーだったからね。

いずれにせよ同じことだったのさ。

その後、エフタは別の町と対立するもこれを撃破。

6年間、イスラエルの士師として働いた。

その後、イブツァン、エロン、アブドンと士師が続いた。
だいぶ士師も出揃った感あるな。
次は士師記に登場する最後の士師、サムソンだよ。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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