5.聖母マリア離婚の危機に陥る

文字数 1,276文字

イエスの母マリアは婚約していたが、聖霊によって身籠った。

同居前のことであったので、マリアの夫ヨセフはひそかに離縁しようと決めた。

なんで開始早々夫婦の危機になっとんねん。
自分の知らぬところで妻が妊娠。

それは当然、離婚事由になりましてよ。

すると天使がヨセフの夢に現れた。

天使はマリアが聖霊によって身籠ったのであって、姦淫したのではないと告げる。

そして生まれた男の子にイエスと名づけるように指示を出した。

なるほど。

イエスの名付けは神様がやったっちゅうことか。

見よ、おとめが身籠って男の子を産む。

その名はインマヌエルと呼ばれる。

うーん。

インマヌエルってどっかで聞いたような……。

『イザヤ書』第7章14節でしてよ、お姉さま。

そこには確かにインマヌエルの名が記されておりました。

『イザヤ書』における預言。

それはイスラエルに救いをもたらす救世主の預言だった。

そしてその言葉の引用は、イエスこそまさに救世主であるとの主張に他ならない。

ヨセフは天使の言葉を了承し、マリアを妻とした。

マリアは処女のまま、男の子を産み、イエスと名づけた。

イエスはヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムで生まれた。

その時、東方の博士たちがエルサレムに来て(ヘロデ王に)尋ねた、

「お生まれになったユダヤ人の王はどこにおられますか。

わたしたちはその方の星が昇るのを見たので、拝みに来ました」。

「東方の博士たち」と聖書にある人たちは、「東方の三博士」と呼ばる。

聖書には彼らの人数も名前も記されていない。

彼らはマーゴイ(マギ)と呼ばれる占星術師で、星を見てイエスの誕生を知った。

三博士はそれぞれメルキオール、バルタザール、カスパール。

『新世紀エヴァンゲリオン』に出て来たコンピュータの名前や。

エヴァは非常に衒学的なアニメでしたわ。

キリスト教のモチーフを散りばめつつ、果たして何を語るのやら。

ギリシア語翻訳において三博士の名が与えられたと言う。

伝統的に、メルキオールはペルシアの、バルタザールはバビロニアの、

そしてカスパールはインドの王だとされる。

ルネサンス後期の画家エル・グレコによる「マギの礼拝」

左からバルタザール、メルキオール、カスパール。

インド人を直接見たことがないんだろう、随分と肌が黒い。

わざわざインドから来てくれたんか?

遠路はるばるご苦労さんやで。

実は中国人キリスト教徒たちの間で、博士の内一人は中国から来たという考えがある。

漢王朝のLin Shang(漢字未確認)なる占星術師が「王の星」を確認した。

そしてシルクロードを通ってベツレヘムまで赴いたと言う。

(Hattaway, Paul; Brother Yun; Yongze, Peter Xu; and Wang, Enoch. Back to Jerusalem.)

竹内文書の「イスキリス・クリスマス」よりは信ぴょう性があるのではなくて?

青森県戸来(へらい)村にはイエスの墓なるものがございましてよ。

彼らはひれ伏して幼子を礼拝した。

そして黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。

ヘロデ王に居場所は知らせず、自分たちの国へ帰っていった。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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