1.バビロニア王の見た夢

エピソード文字数 1,615文字

これはバビロン捕囚後の話だ。

バビロニアの王ネブカドネツァルは優秀なイスラエル人の若者を集めた。

そして彼らにカルデア(バビロニア)人としての学問を身につけさせる。

その若者たちの中にいたのが本書の主人公ダニエル。

それと彼の仲間にハナンヤ、ミシャエル、アザルヤがいた。

彼らはそれぞれ別の名を授けられた。

・ダニエル → ベルテシャツァル

 (アッカド語:バラツゥ・ウスル「彼の命を守りたまえ」に由来)

・ハナンヤ → シャドラク

 (ペルシア語:シトラカ「輝き」に由来)

・ミシャエル → メシャク

 (「神々のようなもの」という意味)

・アザルヤ → アベド・ネゴ

 (アラム語:アベド・ナブ「ナブ神の僕(しもべ)」に由来)

名を与えられても彼らはユダヤの律法を遵守しようとした。

そこで一つ問題が起きる。

王が与えた食べ物や飲み物を拒否したんだ。

律法に従って、食べてはいけないものを避けたんだね。

捕囚されても心は神様に従ってたんやな。

せやけど、そしたらご飯はどないするんや?

水と野菜を求めていますわね。

それだけで大丈夫なのかと侍従長が心配していましてよ。

まるで菜食主義者のようだね。

彼らはそれで十日間経っても健康であれば認めてほしいと願った。

そして結果、誰よりも健康的であったとさ。

神は、この四人の若者に知識とあらゆる文書を理解する力、

そして知恵をお与えになった。

またダニエルは、いかなる幻も夢も解くことができた。

夢解き出来るとかすごいやん。

『創世記』でエジプトの奴隷から宰相に上り詰めたヨセフみたいや。

まさしく。

ダニエルもまた、この夢解きの力で出世の道を歩む。

ネブカドネツァルは夢によって不安に満たされ眠れなくなった。

そこで王は魔術師、呪術師、まじない師、カルデア人(※)を招集した。

※ここでは「占いを専門とする外国人」の意味。

集まった魔術師たちは夢を聞かせてほしいと言った。

夢解きをするのだから夢の内容を教えてほしいというのは当然だね。

しかし王はそれを拒み、夢の内容まで言い当てろと言ったんだ。

てきとうなことを言われて、けむに巻かれるのを嫌ったのでしょう。

現代における占い師を見る目と変わりませんわね。

しかし魔術師たちもさすがに困ってしまった。

他人の夢を言い当てるなんて、神々にしかできないことだと言ってね。

すると王は怒ってバビロンの賢者全てを処刑する命令を発布した。

その賢者の中にはダニエルたちも含まれている。

自分の夢が言い当てられへんから言うて殺すとか。

無茶苦茶な王様やな、ネブカドネツアァルは。

しかし無茶な要求と人々の危機を救ってこその神なのさ。

ダニエルは神に祈り、その神秘を明らかにした。

彼は王の下に行き、夢の内容と解釈を伝えた。

王は夢の中で巨大で眩しく輝く像を見た。

頭は純金、胸と腕は銀、腹と腿は青銅、脛は鉄、足は一部が鉄で一部が陶土。

一つの石が切り出されて足を粉々に打ち砕いた。

そしてその他の鉄、陶土、青銅、金、銀全て粉々となり、跡形もなくなる。

像を打った石は大きな山となり、全地を満たした。

うーん。

なんか不吉な感じのする夢やな。

天使のミカちゃんがそう言ってはいけないかもね。

これは最終的に神の国が建国されるという預言だ。

純金の頭は王ネブカドネツァルで、その後に様々な国が興る。

しかしそれらは全て粉々となり、神が立てた国が永遠に残るというわけだ。

自分が粉々にされるなどと。

そのような夢解きをされて王は怒り狂ったのではなくって?

ネブカドネツァル王はひれ伏してダニエルを拝し、

献げ物と香とを彼に授けるように申しつけた。

あら残念。

なんとも殊勝な態度ですこと。

この夢解きの功により、シャドラク、メシャク、アベド・ネゴを州の行政官に。

ダニエルはバビロン全州を治める、賢者すべての長官に任じられた。

大出世やん。

良かった良かった。

せやけど、聖書でダニエルはダニエルのままやのに。

他の三人は改名後の名前で通されるんやな。

なんとなく恣意的なもんを感じるで。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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