12.ケントゥリオ

文字数 975文字

イエスが山を下りた時、一人の皮膚病患者がイエスに近づき、言った、

「主よ、お望みなら、わたしを清くすることがおできになります」。

イエスは手を差し伸べ、その人に触れて、仰せになった、

「わたしは望む。清くなれ」。

するとその皮膚病患者はたちまちに清められた。

イエスの奇跡だね。

さすがイエス様。

なんでも出来る偉い人や。

治癒を望む者が相手に「お望みなら」というのも変わった言い回しですわね。

あくまで神の望みのままに、という意図かしら。

イエスに百人隊長(ケントゥリオ)が近づき、懇願した。

「主よ、わたしの僕(しもべ)が中風で苦しみ寝込んでいます」

イエスが行って助けようと言うと、百人隊長は答えて言った。

「ただ、お言葉をください。そうすれば僕は癒されます」

ケントゥリオはローマ帝国における基幹戦闘単位、ケントゥリアの指揮官を指す。

軍の中核を担う重要な役割で、名誉ある地位とされる。

ローマの指揮官やて?

せやけどイエスがおるんはガリラヤの辺りやろ。

ローマの支配下にはあらへんのに、なんでそんなんおるんやろ。

それには三つほど、説明可能な案が出ている。

まず国境に近い町として、ローマ軍の駐屯地があったのではというもの。

それとケントゥリオが部下を連れて旅行に来たという説。

他にはヘロデ・アンティパスがローマと同じ制度を採用したというもの。

その場合、このケントゥリオは同胞ということになる。

ルネサンス期、ヴェネチアの画家パオロ・ヴェロネーゼの作。

「イエスとケントゥリオ」だ。

今までの流れからして、彼らはやはりローマ人ではないかしら。

ユダヤの民でなくとも癒やすという方針が書かれている気がしますわ。

せやな。

イエス様は、みんなのイエス様なんや。

独り占めはできへん。

ケントゥリオはイエスの言葉をもらって帰った。

すると彼の僕は癒されたという。

イエスはペトロの姑が熱を出して寝込んでいるのをご覧になった。

イエスがその手にお触れになると、熱が引き、姑はイエスをもてなした。

その後、悪霊に憑かれた者を大勢癒やされた。

こうして、預言者イザヤを通して言われたことが成就した。

「彼はわたしたちの煩いを引き受け、わたしたちの病を担った」。

『イザヤ書』第53章4節

まことに、彼はわたしたちの病を担い、わたしたちの苦しみを背負った。

わたしたちは、彼が神によって打たれ、たたかれ、

卑しめられていると考えた。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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