13.律法学者との対立

エピソード文字数 1,095文字

悪霊に憑かれた二人の男が墓場から出てきて、イエスに出会った。

二人はイエスに願って言った、

「もしわたしたちを追い出されるなら、あの豚の群れの中に入れてください」

イエスが「行け」と仰せになると、悪霊どもは豚の中に入った。

豚の群れはみな崖から湖へ落ち、おぼれ死んでしまった。

豚さん……。
豚の群れを湖へと落としましたが。

そもそも豚を飼っていた者は怒らないのかしら。

このすぐ後に、豚飼いたちが逃げたという描写がある。

ユダヤ人にとって豚は食べてはいけない動物の一種だ。

『レビ記』にしっかり明記されていた。

『レビ記』第11章7節

豚、これはひづめが割れ、しかも完全に分かれているが、

反芻しないので、お前たちにとって汚れたものである。

豚さん、かわええ。
食べてはいけない豚を何故飼っていたのか。

おそらく、ローマ人に売るためだろう。

ローマ人にとって豚肉はタブーというわけではない。

つまり、豚飼いたちは罪を犯していた。

イエスはそれを悪霊退治のついでに罰したというわけですわね。

豚飼いたちが「逃げ」たという描写も理解できます。

心にやましいものでもあったのでしょう。

豚飼いたちは逃げて町に行き、一切を告げ知らせた。

町中の人がイエスに会いに出てきて、この地方から立ち去るように願った。

なんでやねん。

病気治したり、悪霊追い払ったり活躍したのに。

やはり豚を大量に始末したのが問題だったのでは?

律法における罪だったとしても、生活のかかった商売ですもの。

イエスはカファルナウムの町に帰り、中風の人を見た。

その中風の人を連れてきた人々の信仰を見て、中風の人に仰せになった、

「子よ、安心しなさい。あなたの罪は赦された」。

すると、律法学者のある者らは心の中で思った、

「この男は冒涜の言葉を口にしている」。

イエス様の癒やしの奇跡やで。
病は気からやのうて、病は罪からっちゅうのがこん時の考え方やからな。

大元の罪が赦されたら病も治るはずや。

律法学者の考えはもっともなこと。

赦す赦さぬは神が決めること。

いったいイエスは何の権限でもって、「赦された」などと申すのでしょう。

イエスは仰せになった、

「人の子は、地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなた方に知らせよう」。

そして中風の人に起きて帰るように言うと、その人は立ち上がって帰って行った。

群衆はこれほどの権威を人間たちにお与えになった神をほめたたえた。

権限があるのであれば、もちろん神によってもたらされる。

人が人の罪を赦すという新たなスキームがここに生まれたのさ。

けっこう。

ただし、養豚業者と律法学者からは敵視されていることでしょう。

何かをなす際、既存の勢力と軋轢が生まれるは当然ですわね。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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