5.ソロモンの誕生

エピソード文字数 1,089文字

おっぱい出しとるけど、どなたさんやろ。
使いの者から手紙を受け取り、侍女に髪をゆわせる。

高貴な身分の女性であることは確かでしてよ。

よく見ると左上に人影があるだろう?

実はダビデがこの女性の行水を屋上から覗いているところなんだ。

この絵を描いたのはフランドルの画家、ピーテル・パウル・ルーベンス。

ルネサンスの後、古典復興の時代であるバロック期に描かれたものだね。

そして絵の中心となる人物はバト・シェバ。

彼女こそダビデの子、ソロモンの母となる人物なんだ。

また嫁さん貰うんか。

一夫多妻の世で一国の王ともなれば仕方ないんやろけど。

罪深いことに、バト・シェバは人妻だけどね。
なん……やて……。
あらあら。

略奪愛とは、さすがはイスラエルの王。

彼女の夫はヘト人のウリヤ。

名高い勇士だった。

これはイスラエルの兵たちがアモン人と戦っている際に起きたことだ。
ダビデはバト・シェバと床を共にした。

彼女は身籠った。

ダビデは彼女の夫ウリヤを激戦地に送り、死なせた。

しかしダビデの行為は主のみ心にかなわなかった。

しっかりクズに成長しとったな。

略奪どころか、相手の夫を意図的に死なせるとか。

神様が許すわけあらへん。

まったくですわ。

自分の手を汚さずに死地に送るなど。

正々堂々と勝負なさいな。

微妙に二人の意見がズレてる気がするけど……。

まあ、いいか。

こんな風にしてダビデはバト・シェバを自分の妻とした。

預言者ナタンはダビデの行為を強く叱責した。

ダビデは罪を認めたために主の裁きを免れたが、生まれる子供は死ぬことになった。

バト・シェバの子は重い病にかかった。

ダビデは断食をして神様に祈ったが、七日目に子は死んだ。

この子がソロモンではなかったのね。
これは想像だけれど、不倫の罪を洗い流したんじゃないかな。
どういうことや?
この後、バト・シェバはまた妊娠する。

その子こそがソロモンなのさ。

不倫の末に生まれた子が王になる……。

そういうのは外聞が悪いだろうからね。

つまりあれか。

ほんまはバト・シェバの子は死んでなんかおらへん。

せやけど死んだことにして、不倫の罰は済んだ話にしたんやな。

ほんできちんと結婚した後に生まれた子なら、王様になってもかまへん。

そういう筋書きっちゅうわけか。

証拠も何もない単なる邪推。
それもまた一つの楽しみ方でしょうよ。
こういう想像の仕方はよく注意しないと危ないけどね。

かちっと何かがはまった感覚は麻薬なのさ。

そのうち、それこそが真実としか思えなくなる。

「真実」を知ってしまえば、人はかたくなになる。

それを突き崩すのが「知恵」だと僕は思うよ。

さすが、どこかで誰かに知恵を求めさせた悪魔は言うことが違いますわね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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