37.ゲッセマネ
文字数 1,519文字
「決してあなたを知らないとは言いません」。
他の弟子たちもみな、同じように言った。
「今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言う」とね。
つまりイエスに危機が訪れた際、我が身可愛さに知らぬふりをするだろうと。
そんなこと言われたら、弟子としては当然否定する。
「あなた方は、一時間でさえも、わたしとともに目を覚ましていることができなかったのか。
誘惑に陥らないよう、目を覚まして祈りなさい。心ははやっていても、肉体は弱いものだ」。
17世紀の修道女マルグリット・マリー・アラコクがイエスを幻視して広めたらしい。
彼女はイエスの指示により毎週木曜、一時間の瞑想を行っていた。
それが周囲にも広まっていったんだ。
祭司長や、民の長老たちから遣わされた多くの人々が、剣や棒を携えて、ついに来た。
裏切り者は彼らと、「わたしが接吻するのが、その男だ」と示し合わせていた。
ユダはイエスに近寄り、「先生、いかがですか」と言って、イエスに接吻した。
イエスは仰せになった、
「友よ、しようとしていることに取りかかりなさい」。
そう指摘するのはイギリスの牧師、マシュー・ヘンリー。
『ルカによる福音書』で地獄に落ちた金持ちをアブラハムが「息子よ」と呼ぶ。
親しくない者に向けられる友好的な言葉は時として強い非難を含む。
イエスのユダに対する言葉もそうだという解釈だね。
ユダの裏切りも、イエスの死も全て計画通りという話だ。
これは現代の歴史家エレーヌ・ペイゲルスなどが主張しているところだね。
(『Reading Judas: The Gospel of Judas and the Shaping of Christianity』参照)
イエスは「剣を取る者はみな、剣で滅びる」と言って争いを収めた。
そしてこうなったのはすべて、聖書の預言が成就するためであると言った。