3.士師エフド

エピソード文字数 1,104文字

イスラエルの子らはまた神様の目に悪と思われることを行った。

神様は怒り、イスラエルの子らはモアブの王エグロンの圧政に敷かれた。

ひょっとしてイスラエル人て……。
アホなんかなあ。
決して聖書に書かれていることが事実というわけではないからね。

力の至らなさを自分たちなりの仕方で反省しているんだとは思うよ。

イスラエルの子らが叫ぶと、神様は一人の解放者を起こした。

左利きの士師エフドである。

左利き、とわざわざ言うのであれば、何か意味があるのかしら。
ああ。

この物語の肝だね。

エフドは剣を右腿に縛りつけ、エグロンに貢物をささげた。

エグロンはすごいデブだった。

この描写いる?
だ、大事なところだよ。
デブであることもそうだけど、右腿に剣を隠したってことも大事だね。

大抵の人は右利きだから、普段は左に剣を下げるんだ。

ここで左利きのメリットが出てくる。

相手の死角をつくことが出来るってことさ。

あらあら、暗殺のお話?

そういうの、とっても好みでしてよ。

エフドはエグロンに神様のお告げを持ってきたと言った。

そして油断したエグロンに近づき、彼の腹を刺した。

剣は柄まで刺さったが、エグロンはデブだったので脂肪が刃をふさいだ。

エフドは小窓から外に出て、廊下から屋上の部屋の戸を閉じ、鍵をかけた。

この絵はまさにエフドがエグロンを殺そうとする場面だね。

フォード・マドックス・ブラウンという19世紀イギリスの画家が描いたんだ。

右手を天に向けることで注意を逸らし、左手で右腿の剣に手をかけている。

まるで奇術師のような手口だこと。
ちゅうか、エフドの方が悪そうな顔しとるやんけ。
そして王の僕(しもべ)たちは鍵のかかった部屋を見てこう思うんだ。

「王様はうんこ中に違いない」と。

がばがば警備。
エフドはイスラエルの民を率いてモアブを征服した。

その後、士師シャムガルが現れ、牛の突き棒でペリシテ人600人を殺した。

ん?

なんか急に変な奴出てきたけど。

シャムガルも士師に数えられるんだけどね。

彼の出番はほんの2~3行で、牛の突き棒でペリシテ人を殺したってことだけなんだ。

素直に読めば、戦争で活躍した人物ってことなんだと思うよ。
この牛の突き棒というのは何ですの?
農具の一種さ。

牛を突っついて、行きたい方向に歩かせるためのね。

2006年の書籍『All things in the Bible』でこの突き棒についての考察がある。

これは人々の心に「釘を刺す」ものだったのではないかという。

要するに、怠け者のイスラエル人に刺さるメタファーっちゅうわけやな。

お前らちゃんと働けよって。

う……、なんか辛くなってきた。
お姉さまは働かずとも、このビヨンデッタが永遠に面倒見て差し上げますわ。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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