17.笛吹けども踊らず

文字数 1,098文字

ヨハネは牢の中でキリストの活動を伝え聞き、

イエスのもとに自分の弟子たちを遣わして、尋ねさせた、

「来たるべき方はあなたですか。それとも、ほかの方を待つべきでしょうか」。

イエスに洗礼を授けたヨハネは逮捕されていましたわね。

それでも、人づてにやり取りを行うことは許可されていた、と。

そうだね。

「来たるべき方」とは救世主メシアの尊称だ。

後の『ヘブライ人への手紙』でも使われている。

『ヘブライ人への手紙』第10章37節

しばらく、今しばらくすれば、

来たるべき方が、遅れることなく来られる。

この質問に対しイエスは様々な奇跡のあったことを伝える。

自分がと言うのではなく、ほのめかす感じで答えているのかな。

イエスは群衆に、ヨハネについて語り始められた、

「彼は預言者に勝る者である。

『見よ、わたしはあなたの先に使いを遣わし、あなたの前に道を整えさせる』

と書き記されているのは、この人のことである。

ヨハネこそ来たるべきエリヤである。耳のある者は聞きなさい」。

洗礼者ヨハネこそ聖書に書き記された預言者エリヤである。

その聖書とは『マラキ書』のことだ。

『マラキ書』第3章1節

「見よ、わたしの前に道を整える、わたしの使者をわたしは遣わす。

お前たちの求めている主は、突然、その神殿に来られる。

お前たちが望んでいる契約の使者が来ようとしている」

と万軍の主は仰せになる。


『マラキ書』第3章23節

見よ、主の大いなる恐ろしい日が来る前に、

わたしは預言者エリヤをお前たちに遣わす。

神様が来る前に使者のエリヤが来る。

つまり、イエス様の前に現れた洗礼者ヨハネはエリヤっちゅうわけやな。

ヨハネを称賛した後、イエスは当時の人々について非難する。

これはたぶん、現代にも通じる非難だと思うよ。

今の時代は子供に呼びかける子供に似ている。

『ぼくたちが笛を吹いたのに、君たちは踊ってくれなかった。

弔い歌を歌ったのに、悲しんでくれなかった』。

Twitterで「いいね」してあげたのに、「いいね」返してくれなかった。
やめーや。
ヨハネが来て飲み食いしないと、人々は、

『あれは悪霊に憑かれている』と言う。

人の子が来て飲み食いすると、

『見よ、あれは徴税人や罪人の仲間だ』と言う。

しかし、知恵の正しさは、その業(わざ)によって証明される。

子供たちの遊びについては「笛吹けども踊らず」ということわざの由来になった。

お膳立てをしても、それに応じようとする人がいないことを意味している。

聖書については書いてある通りじゃないかな。

自分勝手な基準でもって他人を非難する人、よくいるよね。

草どもは元来そういう性分なのでしょう。

禁ずるよりは対策を講じる方がいくらか建設的ではなくて?

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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