14.ヨシヤの宗教改革

エピソード文字数 1,601文字

ユダ王マナセは偶像崇拝を行い、主の預言者たちを殺した。

彼の息子アモンも同様の政治を行ったが、家来たちの謀反によって死んでしまった。

しかし謀反を起こした家来たちは王になれなかった。

他の国民に殺されてしまったらしい。

そしてアモンの子ヨシヤが新たな王となった。

驚くことに、彼は「主が正しいと思う」政治を行ったと言われる。

ユダの王ヨシヤは神殿の修復に取り掛かった。

その際に大祭司ヒルキヤが「律法の書」を発見した。

書記官シャファンをそれを読み上げると、王は感極まって衣を引き裂いた。

ドイツ人画家、ユリウス・シュノル・フォン・カロルスフェルト。

19世紀初頭にキリスト教美術を再興しようとした「ナザレ派」、らしいよ。

これは本の挿絵かな。

まさにヨシアが服を引き裂こうとする場面だね。

引き裂くっちゅうか……。

なんか胸のあたりをもぞもぞさせてるだけな気ぃするんやけど。

ひげのせいか、年寄りにも見えますわね。

時期的にまだ20代ですのに。

細かいことよりも、ユダ王としての威厳を優先させたんだよ。

……たぶん。

モーセの『申命記』は、いつの間にか失われていた。

11世紀フランスのユダヤ人学者ラシによれば、ユダ王アハズが原典を隠したと言う。

それがようやくお出ましってことか。

服を切り裂くほどに感極まるのも無理ないで。

この事件について、ヨシヤは神に伺いを立てることにした。

その時に頼ったのは女預言者のフルダだった。

あら。

久しぶりに女の預言者がお出ましね。

ユダヤでは伝統的に7人の女預言者がいるとされる。

アブラハムの妻サラ、モーセの姉ミリアム、士師デボラ。

預言者サムエルの母ハンナ、ダビデの3人目の妻アビゲイル。

ペルシア王クセルクセスの妻エステルと、今回の預言者フルダ。

特にデボラとフルダは他の5人と違って預言者であることを公言している。

デボラは「蜜蜂」という意味の名だったね。

フルダは「イタチ」「モグラ」という意味だそうだ。

ステンドグラスか。

左がデボラで、真ん中がフルダやな。

フルダは律法の書を熱心に読んでるんやろか。

19世紀イギリスの美術家サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ。

デザインは彼の手による。

実際に製作したのは、モーリス・アンド・コーという制作会社だろうと言われている。

ステンドグラスは一人ではなく、複数の職人の手によって作成される。

だから残念なことに職人一人一人の名前は残らない。

作品そのものはリーク英国国教会に飾られているよ。

右の女は誰ですの?

剣なんか持って、物々しいですわね。

彼女はユディト。

預言者ではないけれど、『ユディト記』の主役さ。

なかなか面白い展開になるから、乞うご期待だ。

主の言葉を聞きヨシヤは契約を復活させた。

偶像崇拝を破壊し、神殿売春を取り締まった。

祭司ヒルキヤが発見した律法の書に従い、それを忠実に実行した。

しかし、神は先々代の王マナセの行いを許しはしなかった。
今さら良い子ちゃんにしても、もう遅い。

そういうわけやな。

そしてヨシヤほど神に忠実な王はもう現れない。

その前にユダ王国が先に滅びてしまう。

それはさて置き、ヨシヤの最期はあっけないものだった。
エジプト王ファラオ・ネコがアッシリアへと進軍した。

ユダ王ヨシヤはそれを迎え撃つべく出撃した。

両軍はメギドで激突し、ヨシヤは戦死した。


ユダ王国がアッシリアのために出撃を?
実は関係性が大きく変わっている。

当時のアッシリア王国は崩壊寸前で、新たな帝国、新バビロニアが台頭しつつあった。

ややこし過ぎるやろ、古代中東情勢。
ファラオ・ネコ2世の進軍はむしろアッシリアを支援する目的だった。

そしてその途上でユダ王国と戦い、これを討ったわけだ。

結果、ユダ王国はしばらくエジプトへの貢納国となってしまったのさ。
弱小国家ゆえに、大国の動きに簡単に翻弄される。

哀れなものですわね。

イスラエル自体、元々おった先住民を追い払って出来た国や。

歴史は繰り返すってことやな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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