7.国立国会図書館法

エピソード文字数 1,634文字

昭和二十三年法律第五号

国立国会図書館法

国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。

『ヨハネによる福音書』第8章31-32節

イエスは、ご自分を信じたユダヤ人たちに仰せになった、

「わたしの言葉に留まるなら、あなた方はまことにわたしの弟子である。

あなた方は真理を知り、真理はあなた方を自由にする」。

これは、日本における国会図書館についての法、その前文ですわね。

「真理がわれらを自由にする」の文がございますが……。

つまり日本の法律に聖書の言葉があると、そういうことかしら。

その通りだよ。

国立国会図書館の設立に尽力した、参議院議員羽仁五郎(はにごろう)によるものだ。

マルクス主義歴史学を主とする歴史学者で、革新系議員として知られている。

羽仁は昭和23年(1948年)2月4日の参議院本会議で次のように語っている。

第2回 国会 参議院本会議 会議録 第11号

「眞理は我らを自由にする。これがこの國立國会図書館法案の全体を貫いておる根本精神であります。今日の我が國民の悲惨の現状は、従來の政治が眞理に基かないで虚偽に基いていたからであります。」

「軍部又は行政官僚の一部が(中略)現実的でもなければ、綜合的でもない、即ち眞理によらない立法によつて、全國民を誤まり導いた事実は、実に戰慄すべきものであります。」

なんか難しい言い回しやな。

字も読みにくいような……。

半世紀以上前の文章だからね、仕方ないね。

簡単に言えば、かつての軍国主義日本は真理をないがしろにしたということだ。

真理とは現実的で総合的なものであり、物事の根本だと、そういう話だね。

しかしこのような一文を入れるとは。

羽仁はクリスチャンだったのかしら。

そういうわけではないらしい。

彼は1921年にドイツ留学し、ハイデルベルク大学で歴史哲学を学んでいる。

その際、フライブルク大学の図書館で見た銘文が由来だと言う。

Die Wahrheit wird euch frei machen.

ドイツ語で「真理はあなたを自由にする」と書かれていますわね。

フライブルク大学と言えば、あのマルティン・ハイデッガーも教鞭を執ったとか。

世界に名だたる名門大学ですわね。

その名門大学のモットーが「Die Wahrheit wird euch frei machen.」

「ディー・ワールハイト・ヴィルト・オイヒ・フライ・マッヘン」

「真理はあなたを自由にする」なんだね。

しかし、このように重要な聖書の語句を日本の法律に混ぜて良いものかしら。

よく言う、政教分離とやらに反しているのではなくって?

言葉は聖書からの借り物かもしれんけど、真意は別とかちゃうかな。

別にキリスト教徒やのうても、真理とか自由は大事にしてもええやろ?

そういった趣旨の話も当然出ている。

『図書館の自由と中立性』の著者で元司書監の山下信庸がそうだ。

国の機関に聖書の言葉を掲げることの是非を問うたと言う。

実際のところ、ここでの「真理」と「自由」の解釈は明確ではない。

それが聖書に基づくものだと断言できる材料もないんだ。

「われらを自由にする」「あなた方を自由にする」で言い回しも違っているしね。

ほんなら、やっぱ関係無しってことなんかな。
しかし国会図書館はご丁寧なことに、聖書原文のギリシア語まで刻んでくれた。

解釈として聖書と異なることは示せても、無関係と言い張るのは難しいだろうね。

Η ΑΛΗΘΕΙΑ ΕΛΕΥΘΕΡΩΣΕΙ ΥΜΑΣ

イ・アリシア・エリセローシ・イマス

(冠詞)・真理・自由とする・あなた

この「エリセローシ」は「解放する」という意味がありましてよ。

つまり、自由ではない状態を前提とした言葉ですわね

真理がいったい何なのかは分からへん。

せやけど、真理を求める心と、それを実践しようとする決意が大事なんや。

そういう態度が人を盲目の奴隷から自由へと解放してくれるんやで。

まあ、知らんけど。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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