6.ソドムとゴモラ

文字数 850文字

二人のみ使いは夕方ソドムに着き、ロト(アブラハムの甥)の家に立ち寄った。

ソドムの町の男たち、若いのも年寄りもこぞってロトの家を取り囲んで言った。

「お前の家に来た人々を渡せ。セッ○スがしたい」

なかなか大胆な男たちやな。

嫌いちゃうで。

正確に言うとここでは「セッ○ス」ではなく「知る」という表現なんだ。

「知る」というのは結婚による性行為を意味しているらしい。

ここでは男たちが取り囲んでいるから、同性愛の意味だね。

しかしいくらなんでも、旅で来たばかりの男を取り囲むのはあかんやろ。

もうちょっとロマンチックに言い寄るべきちゃうか?

ロトは男たちに向かって言った。

「娘をあなたたちに渡しますから、好きなようにしてください」

しかし彼らは言った。

「そこをどけ」

完全に女には興味無しか。

娘差し出して「好きなようにしてください」も大概やけど。

なんか、倫理もへったくれもあらへんな。

「二人のみ使い」というのは神様の使いで、町の品定めをしていたんだ。

神様はソドムとゴモラの町を滅ぼすつもりだけど、もし町に多少の善人がいればやめておこうと。

それで二人のみ使いが来たわけだけれど、来て早々ひどい目に遭って思っただろうね。

滅ぼすしかないって。

まあ、その気持ちは理解できんこともないけどな。
神様がソドムとゴモラの町を滅ぼすことに決めたので、ロトは家族を連れて町を出た。

硫黄と火をソドムとゴモラの町に降り注ぎ、全住民と草木を滅ぼした。

ロトの妻は(振り返ってはならないという、み使いとの約束を破り)振り返り、塩の柱となった。

やっぱり滅ぼされてもうたか。

せやけど、何で奥さん、塩の柱になってもうたんや?

ソドムとゴモラの町は死海沿岸にあったらしいんだけど、塩は死海の象徴だね。

振り返ってはいけないという約束を破った時点で、ソドムとゴモラと同等にされてしまったんだ。

けれど、塩自体は腐敗を防ぐ神聖なものだから、禊の意味もあったかもしれない。
奥さんは残念やったけど、娘二人を連れて逃げ出せたんやな。
その娘二人は父ロトの子を産むことになる。
マジか。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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