4.より善い生活

エピソード文字数 1,020文字

ミカちゃんは、お金がたくさんあるといいなって思うかい?
せやなあ。

お金がぎょうさんあったら、欲しいもんも色々買えるしな。

今いっちゃん欲しいんはロッキード・マーティンF35ライトニングⅡや。
まあ、素敵なおもちゃ。
いくらかかるんだろうね。

『コヘレト』では富を貯めることの空しさについて語っているんだ。

金銭を愛する者は金銭に、富を愛する者は収益に満足しない。

これもまた、空しいことである。

お金をいくら貯めても満足して終わるということがない。

けれどどれだけお金があっても死に際して持っていくこともできない。

それはとても痛ましいことだと言うのさ。

あら。

貨幣の否定かしら?

そういうわけじゃない。

貯めすぎたところで仕方ないと言っているだけで、日々の幸福にお金は必要だ。

財産を皆で分かち合い、飲み食いして楽しむのが良いのさ。

お金は大事やで。

お金のおかげで、人はかなりの苦労から解放されとる。

せやけどそれを持ちすぎてもしゃあないってことやな。

「どうして、昔は今より善かったのか」と、言ってはならない。

このような問いは、知恵によるものではない。

知恵は遺産と同じく善いものである。

それは、日を見る人々に利益をもたらす。

「どうして、昔は今より善かったのか」

いくらでも耳にする話ではなくて?

歳取った人らが言いがちなセリフやな。

昔は豊かやったとか、人が温かかったとか。

言われてる若い方はそんなん知らんから「ふーん」ってなるで。

往々にして過去を美化した人間が言いがちだね。

社会の全てを知るはずもないのに、全体として良かったかのように語る。

過去よりも、今が悪くなったという言い方の方が多い気がいたしますわ。

犯罪が増加し、お先真っ暗……とか。

そういうのも別に統計情報に基づくものではなかったりする。

ぼやくだけなら良いけど、誤った印象で社会を動かそうとすると問題だ。

善を行い、決して罪を犯さない正しい人は、この地上には一人もいない。
「善」と「悪」

人は多かれ少なかれ、この両方を備えている。

『コヘレト』は読み手に、人の悪口を言ったことをあなたの心は知っていると語る。

個人的な解釈だけれど、自身が正しいと思い込まないよう戒めているんじゃないかな。

空の空。一切は空。

色々あるけど、世界は大して変わらへん。

過去は良かったとか言うけど、過去も未来も同じや。

人は完全な善でも完全な悪でもあらへん。

そのへんを肝に銘じつつ、日々の幸福を大事に生きる。
それこそが「より善い生活」っちゅうことやな。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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