10.天の女王イシュタル

エピソード文字数 1,237文字

バビロニアが委任した統治者のゲダルヤを、元王族のイシュマエルが殺害。

その上、バビロニアの臣民たるカルデア人をも殺して逃亡した。

その地に残されたイスラエル人にとっては一つの心配が想起されましょう。

報復です。

首謀者のイシュマエルがおらずとも、同族の血で贖おうとするかもしれない。

そのようにイスラエル人たちは考えたことでしょう。

軍の隊長ヨハナンは結局、イシュマエルを取り逃してしまった。

カルデア人殺害の罪を着せる相手もいない。

バビロニアを納得させられないと思ったんだろうね。

彼らはミツパに残るのではなく、エジプトに移住したいと考えた。

そこでその是非について神に伺いを立てようとするんだ。

ヨハナンはエレミヤのところに行き、自分たちの「歩むべき道」を尋ねた。

イスラエルの神、主はこう仰せになる。

「バビロンの王を恐れてはならない」

「わたしがお前たちに憐れみを示すように、バビロンの王もお前たちを憐れむ」

「エジプトに行こうとすれば、剣と飢えがお前たちについて行き、そこで死ぬ」

エレミヤの預言はバビロン捕囚前から一貫しとる。

エジプトに期待するんやのうて、バビロニアに従えと。

信仰を中心に考えればそれも正しい選択でしょう。

『エステル記』のような危機はありましたが、

結果として彼らは信仰を守り抜くことに成功するのですから。

神の言葉は「エジプトに行くな」というものだった。

しかしそれを聞いた人々はエレミヤが「嘘」をついていると非難した。

そんなこと言うくらいなら、最初から何も聞かなければ良いのに。

背中、後押ししてほしかったんやろな。

エレミヤはそのへん空気読まへんから。

空気を読んで国を滅ぼすよりはマシかもしれませんが。
エジプトにはエレミヤも付いて行く。

そこで彼が見たものはいつもの偶像崇拝だった。

いい加減にしろと彼は怒るのだけれど、反論されてしまう。

天の女王に献げ物の煙を立ち上らせていた時、

わたしたちには食べ物が豊かにあり、繁栄し、災いもありませんでした。

ところがそれをやめた時から、すべてのものに欠乏し、

剣と飢えによって滅ぼされたのです。

天の女王とはすなわちバビロニアの神イシュタルのことだ。

バアルやアシェラよりも、「実益」を備えた神だと言えるね。

これはドイツ、ベルリンのペルガモン博物館にある。

イシュタル門の復元だね。

本来はバビロニアの北域にあったという門だ。

そら、バビロニアのと同じ女神を祀る方がええやろな。

カルデア人との交流もスムーズになりそうやし。

このあたり、関係性が複雑化していますわね。

エレミヤは親バビロニア的な態度を取りながら、信仰は神一筋。

対して他のイスラエル人は反バビロニアでありながら、イシュタルなどを崇める。

実益を取りながらも、心の大事な部分は譲らない。

エレミヤのそのような言動はなるほど理があるやもしれません。

エレミヤはもちろん反論した。

エルサレムの滅びは、イシュタルを拝み、神の怒りに触れたのだと。

そして同じようにエジプトの王、ファラオ・ホフラが敗北すると預言した。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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