15.十二人の使徒

エピソード文字数 1,458文字

イエスは各地で病人を癒やした。

時には死人さえも蘇らせて人々を驚かせた。

ファリサイ派はイエスが「悪魔の頭」の力を使っているのではないかと疑った。

毒を以て毒を制すというやつだね。

イエスの言うことなど聞くものですか。

いえ、サタニャエルならば戯れに聞いてあげるのかしら?

そうだな……。

面白そうなら聞くかもね。

さて、イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、病を癒やす権能をお与えになった。
十二人の弟子って急に出て来たな。

七人くらい出会い飛ばしとるやんけ。

マタイだけでなく、他の福音書でも全員の召命が記されるわけじゃない。

聖書にその活動がほとんど記されていない人物も多い。

聖書ではなく、後の伝承という形で人物像が浮かび上がったりするけどね。

イエスに付き従うものがたった十二人というわけではありませんわね。

その十二人は皆をまとめる代表者。

また、イスラエル十二部族に呼応した人数でもあるのでしょう。

救世主はイスラエルの十二部族を導く、という話もあったからね。

そういう関連付けはされたんだろう。

十二使徒の名は、次のとおりである。

まずペトロと呼ばれるシモン、その兄弟アンデレ、

ゼダイの子ヤコブ、その兄弟ヨハネ。

人を漁(すなど)る人になれ言われた漁師の四人やな。
フィリポ

バルトロマイ

これは初めて聞く名でしてよ。
フィリポは『ヨハネによる福音書』にその名が出てくる。

ガラリヤのベトサイダ生まれということだ。

また、バルトロマイはフィリポの知り合いで、ナタナエルと呼ばれている。

おそらくバルトロマイがギリシア名で、ナタナエルがヘブライ語の本名だろう。

トマス
機関車……。
ではない。
しゅん……。
トマスは「双子」という意味の名前だ。

本名はユダではないかとも言われている。

けれど実際に誰かと双子なのかどうかは不明らしい。

徴税人マタイ
『マタイによる福音書』の著者さんやで。
そうではないという話もあるけどね。

深追いは避けよう。

アルファイの子ヤコブ
この人物はゼベタイの子ヤコブと区別して小ヤコブと呼ばれたりする。

ゼベタイの子ヤコブは大ヤコブだね。

小とか言われると、なんや大したことないみたいに思えてまうな。
しかしこの小ヤコブ、ただものではないかもしれない。

実はイエスの兄弟ではないかと言われているんだ。

な、なんやってー!?
血縁関係については不明瞭だ。

仮に縁者だとして、イエスは実力主義的なところがあったような気がするね。

モーセは兄のアーロンを腹心にした。

だけどイエスはそうじゃない。

意外にキリスト教を広めるにあたって重要なところかもしれませんわね。

企業が飛躍する際も、家族経営をやめて有能な人物を後継とするように。

タダイ
タダイの本名はユダ。

彼もまたイエスの親族だった可能性があるという。

たった12人なのに、名前が被り過ぎですわね。

なんとも面倒な。

熱心党のシモン
熱心党はゼロテ派のことやな。

けっこう過激な連中やったと思うけど。

そんなとこの人間まで弟子にしてもうたんか?

いちおう「熱心党」とは言うけれど、これは誤訳ではないかという話がある。

聖書学者ジョン・P・マイヤーは「熱心な」とすべきではないかと言っている。

要するにただ信仰に熱心というだけで、ゼロテ派に属していたわけではないということ。

ただそれを証明するほどの記録も残されていない……。

そんなところかしら。

イエスを裏切ったイスカリオテのユダ
そして最後に名前が挙がるのがお待ちかね。

十二使徒の中で最も名の知れた人物だ。

ダンテの『新曲』では地獄でルシファーに頭から齧られていた。

ある意味で、もっとも興味深い人物ですわね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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