3.民、王を求める

エピソード文字数 918文字

サムエルはイスラエルの民全体に告げた。

「主に立ち返るには、異国の神々やアシュトレトに仕えてはならない」

「主のみに仕えれば、あなたたちをペリシテ人から救うだろう」

イスラエルの子らはバアルとアシュトレトではなく、主のみに仕えるようになった。

まーた、みんなしてバアルとアシュトレトを拝んどるやないか。

もはやコントやろ。

わたくしが魅力的過ぎるのです。

仕方ありませんことよ。

毎度のごとくイスラエルの民は改心して神を拝み始める。

そこにペリシテ人たちが攻め上ってきた。

けれどサムエルが神に生贄を捧げると、ペリシテ人たちは雷に動揺した。

その隙にイスラエル人たちが襲い掛かって、ペリシテ人を打ち負かす。

いつも通りっちゅう感じやな。

読者も飽きてくるし、そろそろテコ入れせなあかんのちゃうか?

安心してほしい。

歴史の大きな転換点が近づいているんだ。

サムエルは年老いて二人の息子を跡継ぎとした。

しかし息子たちは賄賂によって動き、民からの支持は得られなかった。

イスラエルの民は他国のような王制を求め始めた。

あらあら。

イスラエル王国の始まり、というわけですのね。

王の中でもダビデとソロモンはそれなりに名が通っていますわ。

とりわけ、わたくしを使役できるなどと思い上がったソロモン……。

あれの顔を拝まねばならないのは、とっても不愉快。

地獄にいられてもうっとおしいから追い返してやりましてよ。

明治生まれのキリシタン研究家、浦川和三郎はこう言ったらしい。

「彼(ソロモン)が、はたして父ダヴィドのように改心して神様のおん赦しをいただいたか随分疑わしいものだ、という人が多い」とね。

ビヨンデッタが追い返したんなら、天国に行くしかあらへんな。
ソロモンの魂が天国にあるか地獄にあるか。

実は後世、神学者の間でずっと議論の種になっている。

聖アウグスティヌスなんかは地獄に堕ちたとみなしていた。

ダンテ・アリギエーリによる『神曲』では天国にいることになっている。

西洋社会で千年以上かけて、ソロモンは天国行きか地獄行きかと議論になった。

そしてこんな極東の島国でまで、天国か地獄かと騒がれる。

滑稽ね!

草どもの王に相応しい道化ぶり。

ともあれ、まずは最初の王サウルだ。

彼の軌跡を追ってみるとしよう。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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