11.シュメールの神々

エピソード文字数 1,676文字

サマリアが陥落し、イスラエル人たちは連れ去られ捕囚の身の上となった。

そしてサマリアには別の民が移り住んできた。

そして彼らは当然、負けたイスラエルの神なんか拝みやしない。

各々が崇める神々の像を造って奉じるわけだ。

どんなんやろ。

アッシリア王国の民ならメソポタミア神話やろ?

マルドゥークとかちゃうか。

ここは流行に乗ってギルガメシュ、ではいかがでしょう。
ギルガメシュが信仰対象になるかどうかは分からないけどね。
バビロン、クト、アワ、ハマト、セファルワイム。

アッシリア王はそれらの地域から人々をサマリアへと移住させた。

バビロンの人々はスコト・ベノトの神を祀った。

この神はバビロニアの国家神マルドゥークの配偶者、ザルバニトゥである。

(NIV, Chronological Study Bibleを参照)

マルドゥーク本人やのうて、その嫁さんやったか。
そうではなく、マルドゥークそのものだという学者もいるらしい。

実際のところどうだったかを知るのは難しいだろうね。

いずれにせよ、バビロニアの重要な神を祀ったことに違いないのでしょう。

であれば、両方祀っていてもおかしくないのではなくて?

どちらであるかなど、瑣末な問題ですわ。

雑だなあ。
クトの人々はネレガルの神を祀った。

ネレガルはバビロニア神話において戦争と疫病の神とされる。

なかなか素敵な神様のようね。

戦争も疫病も大好きでしてよ。

(なんか、昔見たアニメの企業名にそんなんあった気ぃするなあ……)
ネルガル、と呼んだ方がよく聞く名前だろうね。

太陽神であると同時に災禍をもたらす神とされた。

あのへんの夏は人が死ぬほど暑いからね。

日本の夏に比べたら「災禍」言うても不思議ちゃうわな。

ネレガルに比べたらアマテラスは恵みの神様やで。

アマテラスが恵みの神かどうかは議論の余地がありそうだね。

日本列島であっても、民衆にとって夏はさほど優しい季節ではないよ。

ハマトの人々はアシマの神を祀った。

アシマはアッカド神話における運命の女神シムティと同一視される。

(Noah's Ark and the Genesis-10 Patriarchs: A Study in Genesis-10を参照)

また、その名はアシェラに通じる。

(NIV, Chronological Study Bibleを参照)

アシェラ像なら今まで散々倒されとったな。
アッカド神話はバビロニア神話とは別物でしたかしら。
そのへんは正直曖昧だ。

全部まとめてメソポタミア神話と呼ぶけどね。

シュメール神話、アッカド神話、バビロニア神話、アッシリア神話。

このへんはだいたい同じだと思っていい。

ギリシア神話とローマ神話みたいなもんやろか。
難しいところだね。

神話というのは、なかなか明確に起源を辿れるものではないから。

アワ人はニブハズとタルタクの神を祀った。

ニブハズは犬の頭を持つエジプトの神アヌビスと同一視される。

(Smith’s Bible Dictionaryを参照)

タルタクはロバのイメージで祀られるが、詳細は不明である。

頑張って調べたんだけどね。

タルタクが何なのかよく分からなかった。

ロバ頭ということなら、パレースという神のことかもしれない。

バーバラ・ウォーカーの『失われた女神たちの復権』によると、

パレースは後のパレスチナやパレス(宮殿)の語源になったらしい。

アヌビスの方は有名やな。

「闇の審判」にはお世話になったで。

わたくしも、『女神異聞録ペルソナ』はとても楽しませていただきました。
セファルワイム人は自分たちの子供を火で焼き、アドラメレクとアナメレクに捧げた。
セファルワイムは『イーストン聖書辞典』によれば「二つの本の町」という意味らしい。

バビロンの北、ユーフラテス川沿いにある町だね。

アドラメレクはミルトンの『失楽園』に堕天使として登場する。

天使ウリエルとラファエルに退治される役回りでね。

実際のアドラメレクはアッカド神話の太陽神。

そして一緒にいるアナメレクは月の女神だそうだ。
太陽と月の神様か。

やっぱり喧嘩とかしとったんかな。

記紀神話のアマテラスとツクヨミみたいに、ね。
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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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