7.ハマンの磔刑
文字数 1,157文字
ペルシア王クセルクセス1世は夜眠れず、日々の記録を従者に読ませた。
その記録の中に、ユダヤ人のモルデカイが王の暗殺を阻止した件が書かれていた。
王はモルデカイにどんな栄誉と地位が与えられたかと尋ねた。
従者たちは「何も与えられていません」と答えた。
寝付かれへん時に日記とか読み返す気持ちは分かるで。
今風に言えば、TwitterのTLを繰り返し眺めるような感じやろ。
王が夜寝付けずに記録を見ることで、モルデカイのことに気付く。
これは出来すぎたシチュエーションとも言える。
だからか、七十人訳聖書では神が睡眠を妨げたからと語っているね。
ハマンが王宮の庭に来たので、クセルクセス1世は彼を呼び寄せた。
そして「栄誉を与えたい者に対して何をすべきか」と尋ねた。
するとハマンは自分のことだと早合点して答えた。
「王の着た服を着せ、王の乗った馬に乗せて町の広場を通らせてください」
王は「急ぎ、モルデカイにそのようにせよ」と言った。
赤っ恥ですわね。
王の命を受けた瞬間のモルデカイの顔ったら。
ピーテル・ラストマン。
僕の大好きなレンブラントのお師匠だよ。
この絵はモルデカイが栄誉を賜った場面だね。
赤っ恥をかいた後、ハマンは王と共にエステルの酒宴に参席する。
そこで王はエステルに何でも望みを聞いてやろうと言う。
「国の半分なりとも与えてやろう」と言うのさ。
クセルクセス、国の半分与えた過ぎやろ。
何回同じこと言うねん。
なんでもしてあげたいという気持ちの最上表現なんだろうね。
それ以上だともう、国の全部をあげるくらいの勢いだよ。
エステルは王に言った。
「わたしの望みは、わたしの民族をわたしに与えてくださることです」
「わたしの民族は殺され、絶やされようとしています」
そして民の死は王の損失であると語った。
王はエステルに、そのようなことを誰が企んでいるのかと尋ねた。
エステルは答えて言った。
「ここにいる悪人ハマンこそ、仇であり、敵です」
なんとも劇的な場面ですわね。
まるで名探偵が真犯人を解き明かすかのような。
19世紀から20世紀にかけて活躍したイギリス人画家。
アーネスト・ノーマンドの「ハマンを非難するエステル」だね。
そもそもユダヤ人撲滅の勅令は王も認めたことじゃないかって思うけどね。
聖書の中で、王がその民族をユダヤ人と知る場面は無い。
モルデカイやエステルに害の及ぶこととは知らずにいたわけだ。
しかし王は激怒した。
ハマンは慌ててエステルに助命を請う。
けれど王は「王妃を辱めようとさえするのか」と怒りを募らせた。
そら、国の半分もあげたいほどの可愛い嫁さんやからな。
その嫁さんが「悪人」とまで言う相手を許しはせえへんやろ。
そしてハマンは彼自身がモルデカイをつるすために用意した木に掛けられた。
ハマンの磔刑により、王の怒りは解けたと聖書は語る。
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