7.ソロモンの第一の箴言③

エピソード文字数 1,284文字

二種類の分銅、二種類の升。

そのどちらも主に忌み嫌われる。

二種類?

分銅とか升ってのは、量とか重さを確認するためやろ?

それが二種類あるってのはどういうことや?

今ほどに精密な計算ができない時代だ。

そのための道具もまちまちで、その差を悪用することも出来た。

たしか、支倉凍砂のラノベ『狼と香辛料』でもそのような場面がありましたわね。

主人公のロレンスがコショウを売る時に、相手が天秤を選ぶ場面が。

あれは「仕掛けの無い」天秤を選んで相手への誠意を示したところでした。

結果はまあ……、いかにも愚かな草たちと言ったところですが。

商売というのは信用で成り立っている。

その信用を失うような行為をすれば、神に見放されるということだね。

屋上の部屋の片隅に住むのは、

喧嘩好きな女と広い家にいるよりはましである。

これ書いた時、ソロモン奥さんと喧嘩でもしたんちゃうか。
妾の多い彼のこと。

何人もの女を泣かせ、怒らせたことでしょう。

『箴言』もかたなしだにゃ。
荒れ地に住むほうが、

喧嘩好きで、気難しい女と住むよりはましである。

……。
まあ、そのうちええことあるって。
高慢で横柄な者 その名は「あざける者」

彼はいばって、無礼な振る舞いをする。

「あざける者」は英語では「scorner」と表現されている。

発言または表情によって軽蔑を表す人、という意味だ。

言葉だけでなく態度も含まれているわけだ。

別に構わないのではなくって?

他者を見下せるほどの価値がその者にあるのでしたら。

偉そうにしとる奴はさほど偉くもないことが多い気ぃするけどな。

うちんとこのボスは別やで?

あれはほんまに偉いんやから。

怠け者は言う、

「獅子が外にいる。わたしは巷で殺される」と。

ライオンに殺されるかもしれんから外に出られへんてことか。

なんちゅうか、時代を感じさせる言い訳でおもろいな。

近代文明は怠け者たちから言い訳を奪ってしまいましたわね。

ついには「出かけるための服がない」とまで言わせてしまいました。

繰り返し言ってると『オオカミ少年』よろしく、ほんとに殺されるかも。
怠け者については第6章6節に面白い話があるんだ。

そこでは怠け者に対して、アリのところに行って観察しろと言う。

アリって、虫のアリ?
その通り。

アリには監督者も支配者もいないのに、夏のうちに食べ物を蓄える。

秋の刈り入れ時にも食糧を集める。

そういうアリをよく見習うんだぞってことらしい。

監督者や支配者がいないというのは、アリに関する理解が浅かったからですわね。
『アリとキリギリス』みたいな話やな。

ひょっとして、聖書のその部分が由来なんやろか。

『アリとキリギリス』の作者イソップは紀元前600年頃の人だ。

古代ギリシアに暮らし、奴隷であり、物語作家であったと言われる。

ソロモンは紀元前900年よりも前の人だから、時系列だけを見ればあり得る。

ただ、『箴言』はそもそもユダヤ人の教育目的で書かれている。

そんなものを古代ギリシアに暮らすイソップが読んだかどうか。

それよりは、広く一般的に「アリは働き者」という通念が広まってたんじゃないかな。

なるほどなあ。

今でもアリさんは働き者のイメージあるしな。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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