1.罪を清める八つの幻

エピソード文字数 1,890文字

ゼカリヤは『ハガイ書』のハガイと同時代の人物。

つまり、バビロン捕囚後、神殿再建時に活躍した預言者だ。

彼の預言はなかなかにユニークだ。

神がイスラエルを守り、その罪を清めてくれる。

そうした意図を持つ幻を、神はゼカリヤに示したと語る。

【第一の幻】馬に乗っている人たち

その夜、わたしは赤毛の馬に乗っている人を見た。

彼はミルトスの木立の中に立っていた。

彼の後ろには、赤毛や栗毛の馬や白い馬がいた。

彼らはミルトスの木立の中に立っている主の使いに答えて言った。

「全地は実に平穏です」。

こいつらは天使ですわね。

様々な馬に乗り、地上のあちこちを見て回ったということかしら。

それでその結果をリーダー格の天使に報告している、と。

天使たちのリーダーなら、それはミカちゃんのことかな?
せやな。

なんせうちは、天軍の長やし。

【第二の幻】四つの角と四人の鍛冶

四つの角はユダとイスラエル、そしてエルサレムを散らした角。

四人の鍛冶はその四つの角を打ち滅ぼすために来た。

四つの角……。

バビロニア、エジプト、モアブとエドムといったところかしら。

特定の国を指す言葉ではない、という話もある。

四人の鍛冶も単にそれを滅ぼすための表現だからね。

【第三の幻】測り縄の男

一人の人が手に測り縄を持っていた。

ひとりのみ使いが、別のみ使いに言った、

「走り、あの若者に主の言葉を言いなさい、

『エルサレムは城壁のない町となるだろう。

わたしがそれを取り囲む火の壁となり、栄光となる』」

城壁なんか無くても、神様が守ってくれる。

心強いことやで。

大勢の人がエルサレムの中に入ることを神が求めているのさ。

壁で囲うと人が入りきらずに困るからね。

【第四の幻】主の使いの前のヨシュア

ヨシュアは汚(けが)れた衣をまとい、み使いの前に立っていた。

み使いは従者に命じて汚れた衣を脱がせ、ヨシュアに言った、

「わたしはお前の罪を取り除いた。お前に礼服を着せよう」

なんと分かりやすい、罪の清めの表現ですこと。
【第五の幻】金の燭台とオリーブの木

金の燭台上部には油を入れる器と、ともしび皿が七つある。

その器の左右にはオリーブの木が立っている。

ともしび皿七つって、ハヌッキーヤーのことやん。
その形状は様々だけれど、ハヌッキーヤーはハヌカー祭の必須アイテムだ。

けれどハヌカー祭の起源『マカバイ記』は紀元前100年頃。

それに対してバビロン捕囚後、ゼカリヤが生きた時代は紀元前500年頃。

だから単純にハヌカー祭とは結び付けられない。

ハヌカー祭の起源、そのさらに前から七つの灯は意味を持っていたのかしら。

七は数秘術ゲマトリアにおいて完全を意味するもの。

となるとこの燭台は神そのものを表現しているのかもしれませんわ。

そんで、両隣のオリーブの木は何なんや?
「全地の主のそばに立つ二人の油を注がれた者」と語られる。

バビロン捕囚後の指導者、ゼルバベルと大祭司ヨシュアだと解釈されるね。

【第六の幻】飛んでいる巻物

飛んでいる巻物が見えます。

その長さは二十アンマ、その幅は十アンマです。

(「その長さは約九メートル、その幅は約四メートル半です」)

でかっ。

そんで、ながっ。

その幅は最初のソロモン神殿の玄関口と同じ。

つまり、巻物は神の言葉が出ることを暗示している。

『列王記上』第6章2-3節

ソロモン王が主のために建てた神殿は、長さ六十アンマ、

幅二十アンマ、高さ三十アンマであった。

神殿の外陣の前廊は、長さが神殿の幅と同じく二十アンマで、幅は十アンマであった。

巻物には何が書かれているのでしょう。
呪いの言葉さ。

これによって偽りの誓いを述べる連中を滅ぼすと言う。

まあ怖い。
【第七の幻】升と女たち

エファ升の鉛の蓋を持ち上げると、中に罪悪そのものである女が座っていた。

女を押し返し、鉛の蓋を閉じると、二人の女が翼に風を孕んで出てきた。

彼女たちはこうのとりのような翼を持ち、エファ升を持ち去ろうとしていた。

天使は升の中の女を見て「罪悪そのもの」と表現した。

そして羽を持つ女たちが持ち去った後には「女のために神殿を建てる」と言う。

エファ升の中にいた女は女神イシュタルを指すのだろう。

エルサレムの外に追い出すという意味なんじゃないかな。

【第八の幻】四両の戦車

赤毛の馬、黒い馬、白い馬、まだらの馬がそれぞれ戦車を引いていた。

それぞれ東、北、西、南の地へ出ていく。

天使は叫んで言った、

「見よ、北の地へ出ていく馬は、北の地でわたしの霊を鎮めてくれる」

北の地はバビロニアの土地を意味する。

偶像をエルサレムから北まで運んでくれるというわけさ。

以降『ゼカリヤ書』では神との約束と審判。

そしてエルサレムの救いと清めについて語られる。

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登場人物紹介

【ミカ】(性別:無性 時々 男性)

神様の命令で人々を見守ることになった大天使ミカエル。サタニャエルくんに色々教えてもらう生徒役。ただ何も知らないお馬鹿ではなく、それなりに常識人。特に戦争に関することはなかなか詳しい。無意味な殺戮は嫌うが、戦争そのものは悪と見做さない。ビヨンデッタの作った「ケーキ」にトラウマがある。


(うんちく)

その名は「神に似たるものは誰か」という意味を持つ。ミカエルはMa-Ha-Elと分解され、「偉大なる神」の意味ともされる。天軍の総帥であり、右手に剣を持った姿で描かれる。


聖書において天使の翼に関する記述は無い。その造形はギリシア神話における勝利の女神ニケ(Nike)が由来であると考えられている。


ミカエル、最大の見せ場は新約聖書『ヨハネの黙示録』12である。そこには以下のような記載がある。

「かくて天に戰爭おこれり、ミカエル及びその使たち龍とたたかふ。龍もその使たちも之と戰ひしが、勝つこと能はず、天には、はや其の居る所なかりき。かの大なる龍、すなわち惡魔と呼ばれ、サタンと呼ばれたる全世界をまどはす古き蛇は落され、地に落され、その使たちも共に落されたり。」

おそらくは翼の生えた勝利の女神と、戦争における戦士の姿とが融合され、現代におけるミカエルのイメージを形作ったのであろう。

【サタニャエル】(性別:???)

ミカちゃん一人だと心配なので付いて来た。色んなことに詳しい黒猫。「サタニャエル」を名乗っているが、悪魔サタナエルと同一視されるかは謎。ビヨンデッタから「サマエル」と呼ばれてもおり、そうであれば楽園でイヴを誘惑した蛇であるとも言える。非常に好奇心旺盛で勉強熱心。たまに悪魔っぽいが、基本的には常識的。


(うんちく)

「猫に九生有り」のことわざは、高いところから落ちてもうまく着地してしぶとく生き残る、タフさから来ていると考えられる。何故「九生」なのかは定説は無いが、エジプト神話の猫頭の女神バステトが九つの魂を持っていたことに由来するのではないか、と言われる。そのようにしぶとい猫を殺すには「好奇心」が効果的であるとことわざは言う(「好奇心は猫を殺す」)。つまり人に知恵を与えたサマエルが、その罪によって神の罰を受けることの暗示として、サタニャエルというキャラクタは造られている。


サマエルは「神の悪意」という意味を持つ。12枚の翼を持つことから、堕天使ルシファーとも同一視される。

【ビヨンデッタ】(性別:男性 or 女性)

ミカを「お姉さま」と慕う悪魔の少女。その正体はソロモン72柱序列第1位ともされる魔王ベルゼブブ。ニーチェを好み、強き者が強くある世界こそが最も美しいと考えている。人間を「草」と呼び、その愚鈍さを嘲笑する。


(うんちく)

作中にあるように、ベルゼブブの由来はウガリット神話における豊穣の神バアル・ゼブル。バアルの信仰は旧約聖書において偶像崇拝として忌み嫌われ、度々敵対した。バアル・ゼブルをバアル・ゼブブと読み替えることで、その意味を「気高き主」から「蠅の王」へと貶めた。


「ビヨンデッタ」の名前は幻想小説の父J・カゾットの『悪魔の恋』に由来する。主人公のアルヴァーレは知的好奇心により悪魔ベルゼブブを呼び寄せ、そのベルゼブブは「ビヨンデット」という名の少年として彼に仕えた。やがて「ビヨンデット」は「ビヨンデッタ」という少女となり、アルヴァーレに強く愛を語る。そしてアルヴァーレは苦悩の末にビヨンデッタを愛してしまう。あまりにあっけない結末についてはここで語らない。


ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』は死の象徴として蠅が描かれる。また、理性を凌駕する闘争心は豚の首として表れた。作中でビヨンデッタが豚肉を好んでいるのも、そうした背景による。

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